音楽、映画、美術、舞台、食事、文学、観光についての体験感想文集
10月25日(日) 広島市中区加古町にあるJMSアステールプラザ・中ホールバルコニー西側エントランスで「メガジョッキ竹野弘識一人芝居 『どこでもヒト肌脱ぐ』」を観る。
10月25日(日) 広島市中区加古町にあるJMSアステールプラザ・中ホールバルコニー西側エントランスで「メガジョッキ竹野弘識一人芝居 『どこでもヒト肌脱ぐ』」を観る。
広島市中区加古町にあるJMSアステールプラザ・中ホールバルコニー西側エントランスでアステールプラザ芸術劇場シリーズ特別企画「どこでもシアター」の「メガジョッキ竹野弘識一人芝居 『どこでもヒト肌脱ぐ』」を観る。
蓬莱竜太さんの劇で初めて目にしたうさぎ小屋の竹野君の第一印象がいまだ根強く残っており、昨日たまたま知ったこの公演に足を運ぶことにした。
人の二倍外は寒くて苦手だが、地に下がる太陽は黄色く明るく斜めに射さり、風はやや弱くなったので彫像の台に隠れて座り、犬の散歩ものんきな本川岸の野外空間で演劇を楽しんだ。
一本目の「ジェンガ少年の宇宙旅行」は演劇世界に集中するまでに時間がかかり、筋や物語が頭にすっと入る前に野外という舞台の新鮮さに心身が騒いでしまい、つかみきれずに観ていた。灰をかぶったような白化粧の顔に、ところどころほつれた衣装の竹野さんは、家庭環境に問題を抱えて宇宙に夢を見る内容が描かれているようで、鬱屈による内面の逃避行を扱っているようでもあった。
二本目の「勇者タケノスと不屈のドルフィン☆熱狂ワイルドスピード」は、落語や講談のような登場する物の演じ分けとなり、竹野さん特有の肉体のエネルギーが躍動していた。自由な発想で物語は進み、一発芸のようなファルスが時に炸裂してこちらの顔面を何度も震わせた。水をガソリンにした魚雷のように、地面との擦れが気になって仕方ないかわいいドルフィンと一体になり、時に水しぶきの吹き上がるイリュージョンを引き起こしてややこしさを抜きにした弾力のコントは全力で水上を駆け抜け、突っ込みどころを散らかしたワニの皮や、ポケットで潰れていたのではないかと心配になるカニも置いていかれ、激しい二人羽織のような空気の塊との疾走は、やや卑猥な映像を思い起こさせるほど激しく汗を散らしつつ、たくましい想像力がぶっとく肉汁の飛沫をとばすようだった。
などと感想も常軌を逸してしまうほど愉快に膨らむ演劇時間となっていて、うさぎ小屋の竹野君の持ち味がほとばしっていた。ただ2年前と違って新鮮な役者として目の当たりするのではなく、今になっては個性的な役者としての存在を確かめるようで、どんな作品の配役ならばという俳優の性格をつい考えてしまい、演技の柔軟性や発声の変化など、火の玉のような力がどのように磨かれて観たことのない役に体現されるかを想像してしまう。
とはいえ、持っている存在感は他になく、アクが強すぎるからこその配役などもあるだろうが、今日のような一人芝居となれば、野性の咆哮する底力が自由に昇華されて、観客を思い切り引き込む良い舞台となるのだろう。
毒にも薬にもなる存在の強さは希有なものだから、蓬莱さんの劇で誰よりも好ましく印象に残った姿は今も変わらず、このような厳しい状況下でこの動きを見せるというのは、本当に勇気ある活動だと心から思う。
劇の質がどうこうではなく、門を閉める音や車のクラクションなどが場面に合わせて意外な効果を発揮する野外で、がむしゃらに状況を打破しようとする力強さを間近で観ると、関係者に勇気とパワーを与えたのではないかと思えるほど、とても有意義な一人芝居だった。
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