10月22日(木) 広島市中区基町にある広島市映像文化ライブラリーで和田誠監督の「麻雀放浪記」を観る。

広島市中区基町にある広島市映像文化ライブラリーで和田誠監督の「麻雀放浪記」を観る。


1984年(昭和59年) 角川春樹事務所、東映 109分 白黒 mm


監督:和田誠

脚本:和田誠、澤井信一郎

撮影:安藤庄平

美術:中村州志

照明:梅谷茂

録音:宗方弘好

編集:西東清明

出演:真田広之、鹿賀丈史、加藤健一、名古屋章、高品格、加賀まりこ、大竹しのぶ、内藤陳、篠原勝之、城春樹、天本英世、逗子とんぼ、笹野高史、鹿内孝


漫画で知るこの物語はロケ地と舞台セットに古い時代がよく表れていて、録音もどことなく懐かしい響きとなっている。他の国で博打がどれほどの存在となっているか知らないが、カジノや盗みを舞台にしたギャンブルはフランス映画で知るものの、麻雀だけで立派なジャンルとしての漫画作品となるのは日本だけではないだろうか。福本伸行さんがギャンブル全般を色々な作品で描いているが、他にも水準の高い麻雀漫画はいくつも存在しており、今の若者には古い賭け事かもしれないが、すこし前の時代の人間にとって特別な社交の戦いの場として、自分の経験も交えて熱く冷たくなることを思い出した。


昨日に観た映画で水谷豊さんと気づけない若い姿に惚れ惚れしたが、この作品でもやや甘いからこそ若干存在感の薄い真田広之さんや、食事番組のダンディな司会とは異なるが顔立ちは変わらない鹿賀丈史さんも良い目をしており、大竹しのぶさんらしい芯から迫力のある演技もあれば、やや若い加賀まりこさんや舞台で観た加藤健一さんなど知っている俳優が登場するので、持っている記憶からの違いで新しく懐古するようだった。


その中で異彩を放っているのが高品格さんで、説得力のある風采はあがりの声と麻雀牌の打音にも味があり、飄々としているからこそ博打の化け物のような底知れない実力が体現されている。


麻雀漫画のような息詰まる心理戦よりも、あくまで麻雀を道具に群像として人物が描かれており、昭和歌謡とカエルの鳴き声などの音が差し込まれて戦後の暗い中を生きる人の輝きがしかと雰囲気を醸し出している。金も女も不動産も、たかが麻雀牌で回り回る引くに引けない場面が無慈悲に描かれながら、金は天下のものとして編集も同様の構成をしている中で、どの登場人物も純粋だからこそこういう世界に身を置き、ちょっとした人との触れ合いに人情を覚えているところが切ない。漫画で知る物語とは異なるそれぞれの弱さも描かれていて、のうのうと安定と我慢にしがみつく一生ではなく、ぎらぎらと自由に生き、身ぐるみはがされて水たまりに捨てられる一生を良しとする美学が語られる。


賭け麻雀だから、そんな言葉をニュースで聞いたこともあるが、人生とは命を賭けることに他ならず、破滅するかもしれないが、そんな真剣なやりとりがあるからこそ人間としての強さは磨かれるのだろう。今となっては金のやりとりのない老後の社交として麻雀はほのぼのと打たれているが、生き抜くための知恵はすべて麻雀牌に凝縮されていると、賭博が教える人生指針に熱くならないことはやはりないと思った。

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