10月21日(水) 広島市中区基町にある広島市映像文化ライブラリーで長谷川和彦監督の「青春の殺人者」を観る。

広島市中区基町にある広島市映像文化ライブラリーで長谷川和彦監督の「青春の殺人者」を観る。


1976年(昭和51年)今村プロダクション、綜映社、ATG 115分 カラー 35mm


監督:長谷川和彦

脚本:田村孟

原作:中上健次

撮影:鈴木達夫

音楽:ゴダイゴ

美術:木村威夫

録音:久保田幸雄

照明:伴野功

編集:山地早智子

出演:水谷豊、内田良平、市原悦子、原田美枝子、白川和子、江藤潤、桃井かおり、地井武男、高山千草、三戸部スエ


先週観た神代辰巳監督の「青春の蹉跌」と連関して、この時代の特色があることを知れる作品だった。ヌードや挿入歌だけでなく、桃井かおりさんの個性と思われた台詞の調子が原田美枝子さんにもあり、戦後とはもはや異なる時代の一片を新しく発見することになった。


前半にハイライトがあると思われるほど、余計な風景やアングルのカットを抜いた演劇的なシークエンスが家の中で続き、市原悦子さんが見本としてよい怪演をしている。温かく柔らかい個性は宿っているが、尖りきらないからこそねっとりした母親の性格が変事に触発されて様々に困惑して変化する様子は、時折おかしいと思わせる面もあるもののそれは悪くなく、水谷豊さんとの格闘は戦慄させる緊張感があり、「痛い!」と絶叫するシーンは残酷なホラーながら真実味があるように思え、まさに心身凍りつく時間帯だった。


水谷さんと原田さんの演技は時につたない間などはあるが、技術や上手さではない根性で突っ込んでくる肉厚があり、全体として素晴らしいよりも粗が散見される中に良さが光るようで、青春の血肉の火照りが戦後の遺伝子を持って根付いているのに加えて、やはりベビーブーマー達の切磋琢磨の熱量が伝わってくる。


家が燃えればタルコフスキーを思い出す。国と風土どころか作風もえらく異なるが、包丁が刺さったり、炎に焼かれたり、車にひかれたり、などの事故を起こしてしまうのではないかと心配になるシーンがところどころあり、これこそ高度経済成長を成し遂げた強烈な青年のエネルギーだと真っ正面から感じる分厚い作品だった。

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