9月2日(水) 広島市中区堺町にある日本料理店「野趣 拓」の猪山椒キーマカレーを食べる。

広島市中区堺町にある日本料理店「野趣 拓」の猪山椒キーマカレーを食べる。


「野趣 拓」さんのカレーを買ってきてくれるというので、前日「ベック」さんに、明日は弁当を買いにこないかもしれない、と伝えて、今日の昼を食べた。


数日前に「季節料理ながせ」さんで締めのカレーを食べている人を見て、美味しそうと思いつつ、食べ忘れた。その時に、スパイスを自身で調合して、出汁で溶いて、という話を聞いた。そうか、日本料理店でのカレーには出汁が混ざるらしい。


ということは、「野趣 拓」さんのカレーも出汁が土台になっているのだろうか。最近レモングラスとバイマックルの違いをわからなくなっている舌は、ショウガらしい茎の香りを感じた。濃く、「山椒魚」さんによる特別配合のスパイスが大きく占めて大胆に押し出している中で、一段強い風味を持っているのが猪の挽き肉で、ぽろぽろよりも粒の大きいみっちり固まった肉は噛みごたえがあり、いくぶん筋もあって個体としての存在を感じた。この味の作りは色の見える深い風味に富んでおり、野生のアクあるクセを削いで、肝心の旨味は剥かれている。全体として重たさのある味わいでも、下支えとなるゆとりのような膨らみがあり、皮相のインパクトではなく奥行きを持っているのは、知ったばかりの出汁の効果だと思いこんでしまう。


ピーマンと卵焼きも出汁が染みていて、ひじきはやわらかく、きゅうりの香は良い意味の臭さをもって、あっさりしながらぼやけない乳酸菌の味があり、米はもっちりした甘さながらも、それだけに固まらないのは麦も含めた三種類の混合だからというのは、後で知った感想だ。


足しただけでなく引いたところがあるからこそ、味の強さなのだろう。やはり出汁のなせる技だと、それを汲む技術を含めた細やかさを知ったかぶってしまう味わい深いカレーだった。

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