6月27日(土) 広島市中区基町にある広島市映像文化ライブラリーでギヨーム・ブラック監督の「宝島」を観る。

広島市中区基町にある広島市映像文化ライブラリーでギヨーム・ブラック監督の「宝島」を観る。


2018年 100分 カラー Blu-ray 日本語字幕


監督:ギヨーム・ブラック


冒頭の子供達の侵入から冒険が始まるのかと思いきや、特にそれらしい展開はなく、警備員に追い出されて終わってしまう。それから運営者らしき二人の男性の会話や警備員の談話に、橋から飛び込む若者たちの姿を観て、群像映画などと思うことなくドキュメンタリー映画だと決めつけた。


作品紹介を読めばやはりそうで、ダミアン・マニヴェル監督の「パーク」を思い出す自然と人間のリズム感があり、あちらはフィクションだが、こちらのノン・フィクションも人間が囲って造形した自然を基本とした憩いの場で、そこに関わる人々が描かれていた。


それがまるで無作為に編集されたようで、Tシャツと制服という些細な差による反抗によって政治家に仕組まれて捕まった元教員もいれば、数十秒の差によってドストエフスキーのような命の拾いを実体験に持つアフガニスタン人の男性もおり、レイシストという単語がアフリカ系やアラブ系の人から発せられるように、多人種国家としてのフランスの現在の問題も端的に織り込まれている。それは自然公園のビーチに裸で戯れる老若男女の肌の色で鮮明にするようだ。


山の中や麓に湖の多い日本では、どこまでも続く森が見渡せる平たいロケーションでの湖は少なく、水際の植生も蔓が繁茂する旺盛な日本の夏と違って抑えのきいた清潔さがあり、これらなどはバルト三国の車窓から体験を浮きあがらせる環境となっていた。


今と昔を懐古する老人男性の静かな沐浴もあれば、肉体交渉を抜きに若い女性との利害の一致を高級ホテルと無聊の慰めで交換したり、イル・ド・フランスの田舎の自然の生きたレジャー施設にはそれぞれの一夏がある。


天気予報の最高気温をあてに集客数を見込む上層部もいれば、江ノ島のようなお盆時期の男女の出会いがあり、昼の長い真夏の太陽が薄暗くなるまで水と一緒に遊ぶ姿は、自分の経験を追懐させる放埒な魅力があった。


フェンスを乗り越えたり、走ったり、川辺で燃やしたり、営業中のテーマパークで警備員に追いかけられたり、閉園後の静まった園内で盛りあがったり、飲んで踊ったり、飛び込んだり、やはり逃げたりと、相模や長久手の火遊びと悪戯を良い思い出とするのは、登場する警備員からしたら頭が痛く、迷惑千万ではあろうが、「今を生きる実感がするんだ」なんて台詞など浮かぶことなく、ただ、目の前の楽しさだけを生きていた二十代半ばまでの季節の一瞬が、たしかに輝かしいものとして今昔にあることは疑うところがない。


通り雨の強さも画面と同じで、気温が下がるのに合わせて閉園するのも似ている。千葉県のテーマパークを模造したような電飾の車が走った夕刻は、そのあまりの程度に大きく笑い、大混雑に運営は混乱をきたして、次の日から見送られたのが思い出される。


頭を抱える運営部を映像で確認して、働く人間が悪さする子供だったことは、多少は許されるのではないかと思ってしまえば、無理があるだろう。自転車や列車がのんびり走り、世界の国々と多くの人種に日本各地から来た人々が働き、一所に集まってグローバルループを介して交流してはパビリオンの夜に騒いだ、そんな去ってしまった昔がやけに懐かしくなる作品だった。

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