6月27日(土) 広島市中区胡町にある八丁座でポン・ジュノ監督の「パラサイト」を観る。
広島市中区胡町にある八丁座でポン・ジュノ監督の「パラサイト」を観る。
2019年 韓国 132分
監督:ポン・ジュノ
脚本:ポン・ジュノ、ハン・ジンウォン
撮影監督:ホン・ギョンピョ
衣装:チェ・セヨン
ヘアメイク:キム・ソヨン
音楽:チョン・ジェイル
編集:ヤン・ジンモ
出演:ソン・ガンホ、チェ・ウシク、パク・ソダム、チャン・ヘジン、イ・ソンギュン、チョ・ヨジョン、チョン・ジソ、チョン・ヒョンジュン、イ・ジョンウン、パク・ミョンフン、パク・ソジュン
八丁座とサロンシネマで「鬼才ポン・ジュノの世界!」が行われるらしく、4作品が上映されるというので、1人の映画作家に焦点を置いた鑑賞をするべく有名な作品からまず観に行った。
パルム・ドールやアカデミー賞などいくつもの映画祭で受賞したという肩書きはやはり邪魔になるらしく、作品を観ながらあら捜しする視点が付きまとった。いったいどのあたりが凄いのだろうか、最近の映画どころか、今も昔も知らないくせに、何を基準に判断しようというのか、それは権威に従わないという小市民らしい反発であり、やたら上司に反抗する使えない部下のようで、今までだって各映画祭の受賞作品を観てきても、このような構えはなかった。とにかく受賞は、作品を見るうえでどうだっていいことだ。
前半の物語の運びと展開の早さはスムーズであるからこそ、誰もが予測するとんとん拍子にストレスは感じなかった。だからといって早い台詞回しや編集のつなぎもなく、遅くはないが早すぎず、計画の口裏合わせなどに余計な時間を費やさずにカットして、稽古と本番の二重の場面の組み合わせなどにスピードとユーモアを与えて描いていた。
初めて目にしたのはグザヴィエ・ドラン監督だっただろうか、スローモションを効果的に使った家族の実生活を捉えたカメラもあり、長回しもあり、災害を俯瞰する見下ろしのショットもあり、どこかに突出するような極端もなく、あらゆる点で優れたバランスの良さが目に付いた。
ところが中盤に入り、ある夜を境にしてから物語の緊密は一気に増して、安易などんちゃん騒ぎへの運びとはいえ、周到な用意をしているように思えた家族が間抜けとも思える場面に遭遇してから、展開は見逃せなくなっていく。ここまでの描き方でも、こちらでもなくあちらでもなく、どちらの家族にも同情を抱いてしまうので、関係が暴かれることに、皮膚の切開から目を背けるような罪悪感らしい痛みを予想してしまった。それは後半に強い形で描かれていて、むしろああいう度合いだからこそすっきりするのは、細かい人間劇ではなく、仮想らしい血だからこそ非現実として切り離せるのかもしれない。
息を飲むうまい展開が見事に続く中で、気に入ったシークエンスはやはり雨の中の3人の逃亡で、ここの描き方は嫌いじゃなく、どのように撮影したのか気になるばかりの水の氾濫の描写も、梅雨時期の今だからこそ身に迫る思いで、雨は火と同様に、事態の中で自暴自棄にさせながら、必死に生にしがみつく生物の本性を垣間見せるようだった。
この映画で最も強く刺激されたのが臭いで、この感覚を道具として扱い、これによって引き起こされる激情の描き方は、とても得心のいくものだった。その前に語られた枕元での話もつながるようで、金や家族への価値観の描写は、この映画そのものが家族間の同情が根底にあることを表しているようだった。
アカデミー賞云々ではなく、退屈にならず、中庸のなかで質の高い作品となっていたから、上映されるポン・ジュノ監督の他3作品が非常に楽しみになった。
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