5月27日(水) 広島市中区西十日市町にある天満川沿いのベンチに座る。

広島市中区西十日市町にある天満川沿いのベンチに座る。


天満川の風景は好きだったのに、護岸工事で景観は変わってしまった。自然の風景を大切に、そんなことは事情を知らずんば気軽に言えず、工事をするのは治水としての意味がないわけはないだろう。それでも人工に守られた風景を少し残念に思うのが本音としての心情だろう。


昨晩は早く眠ったから今日は余力がある。退勤後にオーブでひさしぶりにケーキを買い、それを家の冷蔵庫にしまってから再び外に出た。


中国新聞本社近くの交差点を渡った先に川面に枝垂れる栴檀があり、花を開かせる今の時期の過去を思い出す。風化の進んだ低いベンチに座ると、上に花を咲かせて紫がかったアメジストのような甘い香りを広げて花を下に散らせている。


日差しを気にするこの時期だが、夕日ならばそれほど肌を刺さないだろうと、西日の強さも忘れて右手からの輝きを浴びて座っている。


別になんてことはない。おそらく、絵を描ける人ならばちょっと描きたくなったり、楽器を弾ける人ならちょっと奏でたくなったりするのと同じで、なんだか、ちょっと文章を書きたくなるだけだろう。


対岸にはオーブが閉まっていたら行こうと思っていたアリスがある。香りと風の陽気が良い季節に、耳は今も昔も好きな音楽が流れている。今日読んだ本に、芸術は人生の一時の慰めである、と書かれていた。


慰めがどれほどの慰めになるだろうか。今はその慰めでいいのだろう。瞬間が永遠なんて聞くが、きっと夜でもないこんな時でも、それは感じられるだろう。

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