5月6日(水) 広島市中区新天地にある焼肉店「炭火焼肉 ごろう 流川店」のテイクアウト御膳を食べる。

広島市中区新天地にある焼肉店「炭火焼肉 ごろう 流川店」のテイクアウト御膳を食べる。


つい最近ないくらいプレッシャーのかかる食べ物探しとなっていた。ふらっとすれば自然見つかるぐらいに考えていたのに、頭を使いだすと全然決まらない。連休最終日ということもあって閉まっている店はたしかに多いだろうが、これという場所がなかなか決まらず、流川、並木通り、袋町界隈を回りに回って、とどめの催促を受けた。


より良いものを、より良いものを探そうとすると、賭け事のような確率になっていくのか、期待する分だけ現状から離れていき、自分の理想ばかりをあてはめようとしてしまう。大切なことは状況を把握して、さっさと決めることで、たった50円くらいの宿代をけちって一時間以上歩く羽目になったタイの地方都市が思い出されたので、あと戻りしてホルモンとカルビ御膳を注文した。焼き肉に弱いくせに、焼き肉をテイクアウトする機会が増えている。


待ち時間が終わって店に戻ると、立派な容器の御膳はひっくり返しようのないビニール袋におさまり、手書きの一筆とイラストが添えられている。応対してくれた若い女性がとても愛想よく、弁当たったの2個なのに、まるで、おえらいさんが帰られるぞ、といった具合の店員さん達の声ときたら、恐縮ではなく、感動を覚えるほどだ。


あとあと調べたら、猫屋町に本店があり、十日市店もあるらしく、思い出した。なら近いところで買えばよかったのに……、と思わないほどの流川店の接客の素晴らしさだった。数店舗あるのに、ただ命じられて訓練されたような接客よりも、素直な好感を持てる気持ちのある応対だった。大変なのに……。


家で腹を空かして待っている人がいたので、配達サービスか、それとも少し前に見つけたシジュウカラか、急いで帰ったおかげで肉もご飯もまだまだ温もりが衰えていない。


キムチは時間経過による辛味と酸味ではなく、まだ発酵の進んでいないさっぱりした辛さで、肉によく合う。ごはんを覆うカルビは肉汁が多く柔らかく、ホルモンは脂を持ったクラゲのごとく噛めば噛むほど肉汁がたっぷり溢れてきて、とても美味しいのだが、やはり焼き肉に弱い自分の体質を思い知らされるのだから、良い質のお持ち帰り御膳だ。


食べ物そのものではなく、その店で働く人が良いと、やはりとても美味しく食べられるから、たかがテイクアウトなんて決して言えず、わずかな応対であっても、持ち帰る食事に大きな意味は備わるものだ。


焼き肉屋に行くことはそうそうないからこそ、こんな機会のこういう味わいは、頭ではなく、いつまでも体に残る記憶となるだろう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る