4月4日(土) 広島市中区西十日市町にある焼き菓子店「Narusaya」でスイーツを買う。

広島市中区西十日市町にある焼き菓子店「Narusaya」でケーキ等を買う。


2年前だったか、「コナサン」のマフィンを食べて間もない頃に妻が「Narusaya」のマフィンも買ってきた。スパイスをうまく使った味で、近所に美味しい店が増えたと喜ばしく思った。


とはいえ、忘れるととんと忘れるものなので、行こう行こうと思いながら営業時間を理由に行かずにいた。


団子か和菓子にしようと思っていたら、ふと昨日思い出したので今日行くことにした。12時に開くというので、ちょっと過ぎた頃に調べた場所に行ってみると、店を発見する前に数人並んでいるのですぐにわかった。


並ぶのを好きな人はいるだろうか。自分はそのたちではないが、せっかく来たので待つことにした。10分もしないうちに買うことはできたが、待つ、前の客がたくさん買う、そして美味しそうな見た目についつい手が伸びてしまい、やや買い過ぎた。


安納芋と苺ハーブのベイクドチーズケーキは、チーズと安納芋の組み合わせにパッションフルーツのような爽やかな濃さを感じたのは、レモンが使われているからだろうか。苺ハーブはアニスのような魅惑的な甘さで、シュクレ生地は控えめだ。おおらかで柔らかい甘さが素晴らしく美味しい。


スパイスジンジャーとアプリコットのケーキは、しゃりしゃりするバタークリームは星々の見た目通りきらびやかにアプリコットの甘さが輝く。この食感は駄菓子のヨーグルを思い出させる。気泡のある生地はジンジャーの繊維がしゃきしゃきとして、黒糖の甘みの中でキレが良くも穏やかな辛味があとからのぼってくる。


桜バターとホワイトチョコのクッキーサンドは、見た目通りのバタークリームが口一杯に埋まる百花繚乱の味わいだ。塩と桜の芳香が第一に攻めてきて、ホワイトチョコやキルシュ、藻塩などの渾然は強烈に炸裂する。それでもクッキーそのものにバターと小麦の香りが宿り、これが支えになっていることが風味の強さで静かに知れる。


桜ジャムと抹茶のビクトリアケーキは、たしかな苦味をもった抹茶のパウンドケーキはしっとりしていて、妻のザッハトルテを思い出す。そもそも、ペルヒトルツドルフでホワイトチョコによるコーティングの抹茶のザッハトルテを創作した記憶を踏まえ、比較として購入した。塩の詰まった桜ジャムに桜バターが重なり、抹茶の風味とうまく組み合わさって、他のケーキとは違っていくぶん軽い味わいで食べ進められる。抹茶のザッハトルテに比べると、抹茶の質が異なる。もちろん、旅行中のウィーンでは質の良い食材が手に入らないだろうという身内贔屓だ。


久しぶりに食べた「Narusaya」の焼き菓子は、前の印象通りスパイスや強い風味を巧みに使用したエキゾチックなテイストを持っている。多くの味わいで複雑にケーキが構成されているわけではなく、一つの味に多くを詰めていて、他で経験したことのない新鮮な意匠を感じることができるだけでなく、詳しい原材料の表示からも探る面白さがあった。桜や苺使いも良かったが、安納芋とチーズの組み合わせが最も心を惹いた。きっと、前に食べた時よりもはるかに腕をあげたのだと、たった一度の経験でそう結論させるほどの説得力があった。開店直後から並ぶ理由が良くわかる、とても美味しい焼き菓子だった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る