4月1日(水) 広島市西区天満町にあるカフェ「Re:Re:river cafe'n リヴァーカフェ」でリヴァー定食を食べる。

広島市西区天満町にあるカフェ「Re:Re:river cafe'n リヴァーカフェ」でリヴァー定食を食べる。


自分はスマホを持っておらず、電車待ちや乗車中、もしくは列待ちや食事待ちの空き時間に携帯電話を使うことはほとんどない。それが狙いもあっての選択なのだが、無いからこそ何かをしようとするもので、周りを観るか、本を読むか、文章を書くか、このどれかに時間を宛がうことになる。


今日は昼で仕事が終わったので、4月まで限定という「リヴァーカフェ」さんのランチをとりに行った。何度か訪れたことのあるこの店で、数度待たされた経験がある。妻を介しての知り合いになると1人で店に行きづらくなる自分は、この店での夕食を予定して先に入って待ったことがあった。すぐに来ると思って、着いた真ん中の席で本を読み、文章を書いて待つことにしたのだが、女性客で賑わう店内でこの姿は自他共に異様だった。会話が循環する周囲の中で4人掛けのテーブルを1人で占領して、何かしらに没頭する男はひどくまずいもので、扱いにくく、1時間近く待ったその間は少なからず緊張が保たれていた。これがスマホだったら、おそらく珍しい光景ではなかっただろう。


先に入店することなく一緒に来たので、他に男性客のいない中でそれほど違和感なく落ち着くことができた。この店のホタルイカといぶりがっこのポテトサラダが特に好ましい印象にある中で、リヴァー定食には、無聊と気詰まりを慰めてくれたポテサラとの再会があった。まるで旅館のように小鉢の多い定食は実に多彩な美味しさがあり、アスパラ春巻きとピーマンカツを主菜に、広い国々の味わいがある。アスパラは豚肉が巻かれていて、表面のこんがりした味わいと風味にゴボウを感じてしまった。ピーマンの中からとろけるチーズはまさしくモッツァレッラで、簡単に切れずにどこまでも伸びる食感は噛みごたえがある。汁は牛すじだけかと思ったら、モツらしき内臓もある少し濃い目の美しい味つけで、臭みはまるでなく、油っけを除かれた中でカイワレが香り、大根が形をとどめて染みている。ピクルスは小蕪とブロッコリの食感がよく、ズッキーニの味の染み具合がおいしく、わさびのような口当たりの甘さを錯覚した和風のピクルス液がとても合っている。鶏ハムのようなスライスはクミンの香るタンドリーのようで、パサツキや固さのない柔らかい味わいだ。牛肉のチャプチェも異なったテイストで味覚を強く刺激して、胡瓜と茗荷の酢の物はあっさりしていて、昆布と茎わさびらしき小鉢の粘っこい甘辛さとしゃきっとした食感は、優しい歯ごたえに炊きこまれた玄米を強く引き込む。同席者は合がけカレーを食べていて、このスパイスの使い方だけでもカレー屋が立ち上がるほどのおいしさだった。


昼から女性客の多く集まるだけの理由がここにはいくらでもあるだろう。鋭い味わいでお高く振る舞うのではなく、家庭的という言い訳で親しませるのではなく、厳選された各国の要素を持ちながら質の高い料理で洒落た調和を生み出している。ただこれはほんの一握りで、口にしていない料理は店の黒板や手作りのメニュー表に多く書かれている。驚くべきはこの種類の豊富さで、内装も同様に神経が細かく行き通っている。その中でも、やはり自分はいぶりがっこのポテトサラダが特に大好きだ。


店の入口には背の高い樹木があり、これはアボカドの種が芽を出してここまで伸びたらしい。お店から伸びた植物を買うのではなく、これほどまでに育てたことにびっくりしてしまった。


この果樹こそ、この店そのものだと言ったら、無知になるだろう。多くの料理で大勢の人を迎えるこの店は長くあり、とても及ばない。今まで食べたすべてが本当に美味しく、アボカドが無邪気に育ってしまう理由が自然と知れるほど、この店には土壌の強さがあるのだ。

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