3月7日(土) 広島市中区十日市町にある蕎麦店「やぶ八」でざるそばを食べる。

広島市中区十日市町にある蕎麦店「やぶ八」でざるそばを食べる。


虚無は長時間の睡眠と発汗に埋まり、腹の調子は午前の断食で整える。白目の黄色さは気になるが、悪くない開き方をしている。仕事はないが、空きっ腹に下手な刺激を与えないようにと、十日市探訪らしく近所で蕎麦を食べる。


人は見た目で決まり、店もその通りの印象になることは少なくない。明らかに古い店らしい外観に興味を持てずにいたが、この機を使って行ってみた。


外から見た通り、昭和民芸なんて言葉の似合うような雰囲気ある店内だ。ざるそばを頼む。茶漉しを通過した湯による茶は、それだけで価値がある。


刻み海苔のかかった、まさにざるそばだ。蒟蒻らしい見た目の太打ちで、多少ざらつきのあるもっちりした食感ながら、気取らない蕎麦らしい風味がしっかりある。繊細でもなく、豪放でもなく、庶民らしくうまい蕎麦だ。つゆは鰹節よりも醤油の強い焦げ茶に濃く、すとんと落ちるような重さがあり、この生々しい重量をもった蕎麦に良く合う。わさびは濾したように滑らかでありながら、辛味の勢いと余韻はほどよい。


まいったことに、これほどいい蕎麦を食べられるとは思ってもいなかった。札を出して満足するのではなく、ワンコインでそうなれるとても良い店だ。うどんもあり、丼も一時代前らしい値段になっている。


見た目だけで判断してはいけない。飛び込んで見ないとわからないと、知っていたことを蕎麦に味見させてもらったようだ。

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