2月14日(金) 広島市中区加古町にあるJMSアステールプラザ・5F視聴覚スタジオで「演劇引力廣島 第17回プロデュース公演『泥を泳ぐ』稽古場見学会」に参加する。

広島市中区加古町にあるJMSアステールプラザ・5F視聴覚スタジオで「演劇引力廣島 第17回プロデュース公演『泥を泳ぐ』稽古場見学会」に参加する。


2月20日から24日に上演される舞台の稽古場を見学した。前々から演劇の稽古を生で観てみたいと思っていたので、これは良い機会だとチラシで知ったその日に連絡したが、気づくのが遅く、参加できたのが期間最終日だった。


第一希望日が満員だったので今日も多いかと思いきや、自分一人だけだった。知り合いが参加していて、休憩時間に役者さんや関係者と会話でもできればいいが、舞台で観たことはあっても面識がないので、今日のラジオで流れていた西野カナさんの「トリセツ」という曲が頭に浮かぶほどだった。それにメモ帳とペンを忘れてきたので、もはや蝋人形の風貌さえ自分に覚えるほどの固まりようだった。


それはいいとして、初めての舞台稽古の見学は和気あいあいとしながらも、緊張があった。ダンスレッスンでは体操が楽しそうで、全体の踊りも含めた振り付けも活気があった。演劇はより再現力ある舞台の効果があり、各役者さんの演技には素人目からの、凄いなという率直な感想が浮かんだ。初めて観た者にはそれがそのままの形であって、疑問を挟むことなく受け入れてしまうが、もちろんこの舞台の作・演出家である象千誠さんには色々と考える頭と目線があり、音の選びと音響のタイミングや、役者への細かい動きの注文は、自分には推測できないにしても、どのような表現をイメージしているのか一種の問題として神経を働かせる楽しみがある。


今までに映像で観てきた指揮者の姿や、最近観たオペラ演出家を思い出すと、皆驚くほど細かいニュアンスを見極める感覚を備えていて、容易な妥協を許していない。「神は細部に宿る」というミース・ファン・デル・ローエの有名な言葉は一つの指針として間違いはなく、大まかな構成と形態ができあがっているなら、あとはノミで突つくように細部に手を入れていくのだが、肝心な感覚を備えていなかったら、多くの不細工を見過ごしてしまうのだろう。趣味で気ままな画家や作家なら、いくらでも手を加えていくことはできるが、期限のある中では、手をつける場所を見極める力が必要になってくるのだろうか。


壁に張られた日程表を何度も眺めて、どのような過程を経てきたか想像するが、眼鏡であっても字の読めない箇所があり、段取りが形として思い描くことはできなかった。それでも徐々に日数を重ねて、いよいよ来週には上演されるという緊迫感は斜めの線から伝わってきた。


毎日か、凄いな。関係者にとっては普通かもしれないが、これが感想だ。きっと良い舞台になるだろう、そんな思い込みは短絡的かもしれないが、頑張っている姿を見て成功を願いたくなるのは、本能と人情の違いもあり、比喩としても良くないが、美味しい料理を前によだれが出るのと同じだ。


この貴重な体験に、感謝と、親近感の湧いた応援を合わせたくなる。上演日程も短くないので、どうか頑張ってと思うばかりだ。

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