1月12日(日) 広島市中区西十日市町にある食堂「ホームラン食堂」でおかゆモーニングを食べる。

広島市中区西十日市町にある食堂「ホームラン食堂」でおかゆモーニングを食べる。


前日の午前に食事を抜いたのをふいにするように、昨夜は寝しなに食べまくった。そのおかげで腹はより機嫌を悪くし、ひどいガスも出ている。


ということで昨日入れなかった「ホームラン食堂」へ行った。準備をしっかりして、開店まもない時間を狙って。


今までに入ることのできなかったのが薄っぺらなように、他に客のいない店内に座る。食事のできる間に本棚の前で腰を屈め、頭の断片を覗くように並んでいる本を眺める。気になったのが「茨木のり子」詩集で、それを手にとって待つ。


贅沢の始まりだ。静けさが勝る店内には、炊事の音はがさつではなく、水、火、知らせ、それぞれが順々に鳴っていて、それに調子を合わせて香りも立ち、目はページを捲って晦渋ではない戦時中の風景が立ち上ってくる。こういう時間は休日の中でかけがえのない安息を与えてくれる。


運ばれてきたおかゆを口にして、血管が喜ぶのを感じた。すごい料理だ。ついそのまま全部飲み干してしまいそうになるのを我慢して、おかずに箸を伸ばす。恐るべき料理だ。


つい誇張したくなるのは、それらが本当に良いものだからだ。優れた作品に備わる細部への息遣いが隅々に存在していて、曲の一音符、助詞の判断、線のバランスなどの意味を感じた。ただ一緒にあるのではなく、センスと神経を持っているのとでは、自己の存在を訴えかける気迫がまるで違う。一品一品を噛み締めて味わい、それらを詳細に言葉にしたくなる誘引力を持っている。手間暇をかける。質を上げる単純な作業でありながら、簡単にはできないことだ。とてもおいしい。


単に滋養になるのではなく、心に元気を与えてくれる食事だった。それに生活を落ち着ける風情のある炊事の音と香りに、透き通った詩がもっと強くと呼声をかけて世界を広げてくれた。


腹を崩しておいてよかった。

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