12月8日(日) 広島市中区加古町にあるJMSアステールプラザ・多目的スタジオで「平原慎太郎ダンサー育成プログラム Organ Worksプロデュース『ADDANCE』」を観る。

広島市中区加古町にあるJMSアステールプラザ・多目的スタジオで「アステールプラザコンテンポラリーダンスプロデュース公演 平原慎太郎ダンサー育成プログラム Organ Worksプロデュース『ADDANCE』」を観る。


「Black Swan」

振付:本広奈緒

出演:W_O(本広奈緒・朝比奈梨乃)


「重+力=」

振付・出演:善岡宏和


「Like a heavy stone in the water」

振付:平原慎太郎

アシスタント:佐藤琢哉(Organ Works)

出演:岩手萌子、金谷位里、高橋雅輝、中田絢子、中西あい、西村愛莉


「Journey to ∞」

振付・出演:仁田晶凱


「Tales to fill you with flowers」

振付・出演:栗原麻里子


「ADD」(Organ Works 作品)

作:平原慎太郎

出演:佐藤琢哉、村井玲美、渡辺はるか


前回の「聖獣~live with a sun~」がとても良い作品だった平原慎太郎さんの関わる公演に足を運んだ。


「Black Swan」は観たことはないがナタリー・ポートマンの浮かぶ作品名で、同一人物の二面性を表現しているようにも思える内容は、連打されるビートにクラシックバレエの動きを軸に息の合った踊りがされて、細かい襞の柔らかいプリーツスカートにノースリーブが黒で統一されていた。長くなく、確かな短編を味わう膨らみのある喚起力があった。


「重+力=」はちょっと足りなかった。


「Like a heavy stone in the water」はジャニス・ジョプリンらしき音楽に合わせて小道具の箱型の旅行鞄を主題とするように冒頭で示唆されてから、身長も体型も、基礎とする踊りも異なる出演者それぞれの特徴が組み合わされて展開された。いつも思うのは、演劇も大変だろうが、踊りの振付をよくもこのように考え、覚えることができると感心してしまう。それは高校生の時の自分の体験で、わずか10分足らずの内容を作るのに、音楽はすぐに決まるのだが、振付を考え出して覚えることの苦労が思い出されるからだ。平原さんの振付とあり、全身を使うのは当然として、昆虫のような動きもあり、機械的なのもあり、それがフーガのように連続して、変移していく。そのハーモニーというか、動きの同一と時間差と推移が、とても幅広く、上手に活かされていた。


「Journey to ∞」は足のきれいな踊りで、レコードによるアナログ音とノイズの交じる中で、内からの衝動で四方八方に体はダイナミックな動きで表現されていた。健康的でセクシャルな衣装と体をしており、肉体的な美しさが感じられた。


「Tales to fill you with flowers」の栗原さんは「オトリヨセ企画 in 広島」で観た前回同様に、小さい体であっても一人での舞台であれば錯覚があり、視点が集中されればわからなくなる。それよりも内からの表現力があり、セリフも聞こえやすく情感もあって、なにより顔立ちが良いので視線を集めるだけの要素が全体に散らばっている。やはり個性のある優れた作品だ。


「ADD」は最後に置かれているだけあって最も良く、各出演者の技量が高く、個性もあり、作品のアイデアも面白い。演劇要素を交えながら言葉遊びと意味の解釈を身体表現に落とし込んでいるので、こんな時でさえ恐るべき映画作品である「不思議惑星キン・ザ・ザ」が思い出され、不埒なことにオッケーと両手を広げる動きに「クー」が乗り移ってしまう。おそらく、この先も色々な場面でキンザザは表現の拠り所として浮かんでしまうのだろう。それはともかく、言葉を含めて有機的に展開される踊りは、手足の線の動きに、エネルギーの固まりとしての肉体の動き、それに連関して交差する踊り手の立場も交えられて、行為か、それとも存在だろうか、なにか哲学的な訴えさえ感じる不可思議な視点があった。


正直言って、音楽や映画、劇に比べて、コンテンポラリーダンスが最もわからない。今日も表現の意味することのわからないのがほとんどだった。それでも、肉体から発散される視覚的要素を楽しむことは可能だった。もっと目が慣れれば、様々な情感が内から喚起されるのだろう。

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