12月7日(土) 広島市中区加古町にあるJMSアステールプラザ・能舞台で「茂山狂言鑑賞会」を観る。
広島市中区加古町にあるJMSアステールプラザ・能舞台で「茂山狂言鑑賞会」を観る。
解説:丸石やすし
末広かり
果報者:茂山あきら
太郎冠者:茂山逸平
すっぱ:茂山七五三
清水
太郎冠者:茂山宗彦
主人:茂山千之丞
禰宜山伏
山伏:茂山千五郎
禰宜:茂山茂
茶屋:松本薫
大黒:井口達也
初めて生の狂言を観たのが2年前の茂山狂言鑑賞会で、その時の夜の部で「鬼瓦」の大名を演じていた5世茂山千作さんが今回のチラシの表紙を飾っていたが、訃報があり、あの時の豊かな大笑いのあとのきりっとした表情が忍ばれる。
2階席だったり遠かったりしていたが、今回は正面の4列目で、演者の細かい表情と、俯瞰ではなく平面の視点での舞台の遠近感を味わうことができて、舞台上で座り、立ち、待つ間の目の動きもこのようにあるのだと知ることができた。
「末広かり」は一昨年の広島護国神社での薪能で野村萬斎さんと裕基さんの父子によるものを観て、この間もNHKの放映があったので少し覚えており、芸風がこれほど違うのだと実感した。ふてぶてしさのある太郎冠者の茂山逸平さんの声が豪放で、返事の声やちょっとした表情はより庶民的なニュアンスがあり、狂言ロボットらしい野村さん父子よりもくだけたところがあった。
その印象は「清水」でもより表れて、茂山宗彦さんの太郎冠者はより小狡くあり、茂山千之丞さんの主人は一本気で融通のきかない点がありながら、見通したあとの鬼との対峙の呆れた具合は、立場の逆転による若い者が持つ白けた軽さがあった。
「禰宜山伏」の禰宜と山伏の対比が面白く、偉そうに威張る茂山千五郎さんの声が山のように通り、傲慢さが見事に表情へ張り付いていた。茂山茂さんのぶるぶる震える仕草に上ずった声があるも、立場の細かい変化がよく表れていて、柔らかい発声も明るく膨らむ時が明瞭に聴こえた。それに松本薫さんの茶屋の亭主は見目だけで落ち着くところがあり、機微を察する表向きの配慮がなんとも優しく出来上がっていた。
生の狂言を多く観ているわけではないが、映画や舞台鑑賞の効果だろうか、大雑把ながら味わいを知れるようになっているらしい。寺社仏閣を観てその威容をただわからずに感じるのではなく、意味がわからなくとも細部の装飾や意匠にふと目がとまるくらいだろうか。
次は2年後で、来年は「万作の会」だそうだ。その時も違いをより味わえるように、色々なものに触れて目を肥やしておこう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます