9月9日(月) 広島市中区大手町にある広島県民文化センターで浅野氏広島城入城400年記念わらび座ミュージカル「茶の夢 ~宗箇さぁと私~」を観る。

広島市中区大手町にある広島県民文化センターで「浅野氏広島城入城400年記念わらび座ミュージカル『茶の夢 ~宗箇さぁと私~』」を観る。


作:東憲司

演出:栗城宏

美術:土屋茂昭

作曲:飯島優

振付:高田綾

出演:青山恵梨子、平野新一、鈴木裕樹、常川藍里、森下彰夫、遠藤浩子、神谷あすみ


市民劇場の事務所に早くからチラシが置いてあり、劇団名の響きからすると少し古さと信頼を感じたので、観に行ってみた。


物語は、女子高生が400年昔にタイムスリップして、上田宗箇、浅原村の百姓達、浅野長晟と出会い、交流を深めて成長する。その舞台に、鬼を心の闇として登場させて、主人公の詩織は引っ込み思案を、上田宗箇は戦疲れと城主への葛藤を、百姓の小太郎は百姓という貧しい存在からの恨みと詩織への恋心を、浅野長晟は戦乱の世の城主としての業を、それぞれ迷いとして描かれている。このように書くとそれだけになってしまうが、もっと幅は広く深く、多くの解釈をとることができる。


ミュージカルなので歌と踊りはあるが、会話劇も存分に味わえる。ミュージカルらしいリズム良いテンポでの会話もあり、気楽に観ることもできるが、じっくり味わえる場面もしっかりある。個人的に良いなと思ったのは、浅野長晟と上田宗箇が座り、茶を点てるシーンで、二人の関係性が所作に映し出されていて、互いに内面を覗きながら、何を思い、どのように相手へ心を配っているのか、そんな感想がちっぽけに思えるほど静まり、騒いでいるように思えた。


踊りのほうも見応えがあり、ここ県民文化センターで物語に神楽が登場すると、2年前にできる限り水曜日に足を運んでいたことが思い出されて、しっくりしてしまう。けれど広島神楽と異なり、常川さんの舞は、扇子の動きがあまりにも鋭敏にあり、長い腕の動きも滑らかで、ジャンプして回転する姿は、バレエ経験者としか思えない浮遊感に、振れない軸があった。顔立ちが整っていて、細身だからとても色男に見えてしまい、眼鏡の学生姿だと少し地味だが、向こう見ずな百姓姿だと表情が強くなり、目で追いかけてしまう。登場から思い詰めた表情が多いのだが、じいさんばあさんきつねの小話が歌って踊られると、そこで初めて笑顔が表れて、まあなんて素敵な表情をしているのだと、その変化を見入ってしまった。


短い歌のシーンながら青山さんの声が会場に通って温度がぐんと変化したり、お客さんと対話する浅野長晟演じる平野さんの受け答えが面白かったり、宗箇演じる鈴木さんの存在の変化だったりと、たしかな水準の芝居だった。


特に400年先から来た事を知り、未来の広島について訊ね、豪雨災害、原爆を語るシーンの前後は、本当に昔にいた人物を観るように錯覚してしまい、縮景園に違った思い入れを持ってしまった。


歌に踊りと芝居が組み合わさり、とても親しみやすい舞台だから、広島に住んでいる人が一度見てみれば、きっと楽しめると思う。9月22日まで公演は続くから、役者さんと関係者は大変だろうから、観客の拍手で毎日のエネルギーを与えられるといいなぁと思ってしまう。


いつか秋田に行くことがあったら、あきた芸術村に行ってみたいなと思った。その時は、わらび座による秋田の伝統芸能を観てみたい。

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