6月13日(木) 広島市中区基町にある広島市映像文化ライブラリーで山田洋次監督の「遥かなる山の呼び声」を観る。

広島市中区基町にある広島市映像文化ライブラリーで山田洋次監督の「遥かなる山の呼び声」を観る。


1980年(昭和55年) 松竹 123分 カラー 35mm


監督・原作:山田洋次

脚本:山田洋次、朝間義隆

撮影:高羽哲夫

音楽:佐藤優

出演:高倉健、倍賞千恵子、ハナ肇、吉岡秀隆、武田鉄矢、畑正憲


正直、昨日観た「幸福の黄色いハンカチ」では倍賞千恵子さんの出演時間が短かったのが不満だった。寅さんの映画で初めて観た時に、なんて綺麗な人だと思っていたから、久しぶりに大きなスクリーンで観られるのが楽しみだったのだ。


そんな不満を今日は満たしてくれた。これでもかと倍賞千恵子さんが演技している。人物を調べている時に何かのサイトで見かけたが、そこでは倍賞千恵子さんの美しさは横顔にあると書かれていて、同意した。聡明そうな額という説明から始まり、まったくの同意見だと思った。それから鼻の高さと曲線に、耳から顎にかけてのラインの角度など、思っているが言葉になっていなかったことを代弁してくれた。


昔の日本映画で綺麗な女優さんを観てきたが、個人的には倍賞千恵子さんの顔立ちはとても好きだ。芯が強く、性根が良さそうで、品のある顔立ちは慈愛に溢れている。甘ったるさがなく、すっきりしていて、なによりとても綺麗なのだ。


その倍賞千恵子さんに、また苦虫を噛み潰したような顔の高倉健さんが現れる。この人は格好良い。昨日も思ったが、今日はこの人の体格の良さに、サイボーグのように整った鼻立ちに惚れ込んだ。任侠映画は一度も観たことなく、高倉健さんの出演する映画は今日で二本目だから、役者としての二面を観たに過ぎないが、黒い長靴がなんと似合うことか。


酪農作業をする倍賞千恵子さんに高倉健さんは、牛乳をイメージする健康そのものにあるが、そこに行き着くまでの過去は「幸福の黄色いハンカチ」同様に平坦ではない。真面目な人は、人生に翻弄されてしまうのか。それとも翻弄されたからこそ、真面目になるのか。問答無用だろう。真面目な人間は、いつだって真面目な人間なのだ。それが生まれつきなのだろう。


北海道を舞台に、早足ではなく、季節の移ろいと共に綿密に描き出される風景は、心を寄せる素朴な情感の連続にある。寂れた家に、辛い農作業が躍動的に、もぉぉもぉぉ鳴く牛たちを音に、枯草が香るカットと汗と汚れの焼けた顔と皺をアップで映し出す。


ピエロの役目をしっかりこなす武田鉄矢さん、ひょうひょうと人工授精シーンで存在を示す渥美清さん、酔っ払ったまま馬に乗り夜の雲を背景にふらふらする畑正憲さん、蟹をひっくり返す調子の良いハナ肇さん、登場時間の短い脇役たちの生きの良さも、味のある小品のように効果がある。


これでいて、昨日も、今日も、人生は辛抱だと、温かく諭されるような映画なのだ。

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