5月5日(日) 松山市湊町にあるとんかつ屋「かつれつ亭」でロースカツを食べる。

松山市湊町にあるとんかつ屋「かつれつ亭」でロースカツを食べる。


何かしら名物料理を食べて帰りたいと思いつつ、銀天街から一本北にある筋を平行して店を探していると、いくつかカフェを見つけるが、サンドイッチなどで腹は満たされたとしても、夕飯をいただいたという決定的な実感は得られないと思っていると、カツの香りが鼻につく。みればとんかつ屋があり、店構えからしてそれほど新しくはない。信頼における年数を経ているようにみえる。


入ると、働く人は店の外観同様に一定の歳を経た人達で、おそらく悪くはないだろう。ロースカツを注文して店内を見ていると、英語表記のメニューが充実していて意外に感じる。店長や経営者が外国人観光客に対しての感応があるのだろうか、すっかり渡航者の増えた状態に慣れた今の日本の観光業界であるなら、当たり前の対応なのかもしれない。


そんなメニュー表とは異なり、店の人は持ち帰りようの料理を用意するのに働いている。連休中ということで催しが多いのか、集会にでも届ける少なくない弁当を忙しそうに準備している。


運ばれてきたトンカツは、広島で食べていたトンカツと異なり、その名前を正当に表すような形だ。薄くはなく、かといって分厚くもなく、口にすればやや色のついた油による好き嫌いの分かれる香ばしさがあるも、落ちついた味で、脂身もしっかり端をなぞってあり、見た目どおりの味だ。柚子の利いた味噌汁がとてもおいしく、白味噌の汁はだしが抑えられているのか、華やかな柚子の香りが広がっていて、量も多く、すっきりした味だ。とんかつ屋の味噌汁が美味しいのは、なぜか基本のように思ってしまう。香の物は、菜は塩気が強く、たくあんは既製品のような味がする。ソースも関東のスーパーにあるつぶれた犬の顔をした製品のようにフルーティーな甘さが全面を占めていて、衣が多少濃く、脂身も多いから、塩よりもこのソースがとても合う。芥子がとても生きていて、その速さと飛躍は素晴らしく、打撃のように瞬間的な辛さが脳を襲う。


ありきたりな夕飯だったかもしれないが、たった二日間の観光でも疲れないわけではないから、滋養を得るのに十分な食事だった。

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