5月4日(土) 砥部町大南にあるカフェ「KIZOKU」でランチを食べる。

砥部町大南にあるカフェ「KIZOKU」でランチを食べる。


砥部焼伝統産業会館を出て、腹はすでに空いていたので、教えてもらった店へ行く。少し歩くと、その店は砥部焼観光センター炎の里にあり、すこし嫌な予感がした。車をたくさん停められる場所で、案の定、車に乗ってきた客が店の外まで立ち、一時間ぐらい待つと言われる。そんなに待つなら、コンビニの弁当を選ぶくらいだ。


徒歩の時間を無駄にしたと少しだけ苛立ったが、途中、さくらんぼをついばむメジロと、川辺で掘り起こされた石を見れたので、無駄ではないだろう。


教えてもらったもう一つの店へ行く。これでよかった。


窓側の席に着き、パスタランチを注文する。メニューをみると、ウインナーコーヒーやアインシュペナーがあり、ウバハイランドやキーマンといった種類の紅茶もある。


運ばれてきたのは、コンソメスープ、グリーンサラダ、新玉葱のサラダ、和風パスタだ。


スープは、キューブ型のブイヨンの味もあるのかわからないが、玉葱と人参の甘みがなによりもあり、尖っておらず、かといって時間が経ってだらけきっているのではなく、親しみやすい丸さにある。


マヨネーズであえられた新玉葱がおいしい。この組み合わせでまずいことはそうそうないが、新鮮な甘みに、これまたみずみずしいなスナップエンドウのさやが爽やかに合う。


パスタは、そら豆と鶏肉で、たくさんのニンニクが使われて、柚子胡椒も香る豪快な味だ。ややゆるいスパゲティの仕上がりに、カフェらしい大雑把ともいえる味付けだが、これはこれでおふくろの味のような一つの形式的な懐かしさがあり、これまた柔らかくなりすぎたそら豆が転がり、それでも独特な風味は強く残っていて、おせっかいで味は強いのだが、塩っ辛いわけではなく、温かみのある女性のような味付けになっている。旅行中の空腹時に、こういう料理を食べて文句は出ない。


女性が二人に、男の人が一人働いていて、客を迎える良い雰囲気が出ており、旅行者に話しかけるに最も適当な言葉で話しかけられる。広島から、砥部焼を見に来たと伝えると、男の人は焼物が嫌いでないらしく、笑顔多く、いくつかの話をしてもらえる。梅野精陶所の砥部焼における位置や、そこから分かれた陶芸家達、唐草模様の呉須絵付けの由来、各窯元の特徴など、一風変わった陶芸家の先生の小話も含めて、ただランチを食べるにしてはなかなかおもしろい事を聞けた。


そのなかでも、春秋窯の工藤省治さんは、焼物の価格の付け方が破格だったということを嬉しそうに話していた。その物を見せてもらうと、ぐい呑なのだが、洗練されているも重厚で、小丼のような存在感があり、白磁の絵付けは筆の運びが流麗だ。大胆かつ繊細などという言葉をあてはめるほどだ。


追加でケーキのモンブランを食べながら話を聞いた。「オーブ」で食べたマロンペーストと異なり、よりモンブランらしいイメージの密度のある濃い作りで、味はしっかりしていて食べごたえがある。コーヒーも重みがあるも雑味はなく、たしかにすっきりした味の切れかただから、ケーキによく合う。


お礼を言って店を出る。一時間待ちの店では、こんな悠長に話などしていられなかっただろう。今頃料理を注文している頃だ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る