3月16日(土) 広島市中区加古町にあるJMSアステールプラザ多目的スタジオで「ACDC(アステールプラザコンテンポラリーダンスカンパニー)公演Jealousy Days」を観る。

広島市中区加古町にあるJMSアステールプラザ多目的スタジオで「ACDC(アステールプラザコンテンポラリーダンスカンパニー)公演 Jealousy Days」を観る。


振付・構成・演出:近藤良平


昨年観た時も楽しめたから、今年も行った。顔ぶれは昨年観た人も多く、別の劇で観た姿も何人かいた。


白いシャツに黒い蝶ネクタイ、下は黒のスカートやスラックスなど、統一された色の衣装が学生達のような関係性を生んでいる。


肉団子をこねるような生々しい息遣いの踊りではなく、快活で活発な元気のよい踊りで、観ていて爽やかさと若さがこちらにも吹き込まれるようだ。


21人も出演者がいるので、目立った特徴の人はともかく、それぞれの個性を最初はつかみきれないが、次第にその人の持つ動きの特徴などが表れ、この人は動きはなめらかだがそれが過ぎてややキワモノのようであり、この人は顔立ちが際立って輝き肢体も整っているから獣のような動きはちょっと似合わない、この人は声が澄んで美しく表情も上手いからまるで劇のような空気感を醸し出してしまうほどだ、この人はかわいい顔立ちながら踊りは健康的でダイナミズムがあって好ましい、この人のサルの演技は声が素晴らしく細くない体ながら動きは早く柔らかく線の太い細いではなく、別の踊りではダンディズムな視線で魅せることもできる、などなど、舞台のなかで常に出演者のそれぞれに注視して、とどまらず、表情、動作、飽きることなく観察するようなかたちになっていた。


この舞台では、選曲が非情に良く、音楽がまず先にあって踊りを引っ張っていた。音楽がムードをまず作ってみせて、肉体はそれから、自由一杯に、ひるむことなく、溌剌と動いていた。踊りなく、音楽だけを聴いていても、頭はいくらでも映像を作り出せるほどに、扇情的だが甘ったるくなく、叙情すぎない異国情緒と懐郷的な曲もあり、広く、うまく、聴いたことのない曲が効果的につなぎあわされていた。まるでとあるミックステープを聴くような質の高さだった。それに加えて、生のピアノで無声映画に音を与えるように生彩の強い展開も多くあった。


結果的に、近藤良平さんの腕前に感嘆するのだ。去年もそう、プロでないダンサー達の特徴をつかみ、その人数で、どのような表現をできるかを、難しいことをせず巧みに表現しているようだった。稽古は厳しいのかもしれないが、出演者はみな暗さなどなく、プラスのエネルギーに溢れていて、優しいという印象を受けるほどだ。


鬼瓦のような只者でない顔の近藤良平さんで、その立ち振舞いは落語家のようなふてぶてしいほどの余裕なリズムがあるが、優しい人なのだろうか。詳しくは知らない。去年は舞台で踊る時間があったが、今日はたったの二場面だ。それでも、その肉体の強さ、動きの速さは目を瞠るものであり、存在感は数回りも違う。


やっぱり楽しい踊りの舞台だった。肩肘張らず、楽しんで観れる。そこに息を飲むような場面が少なくても、清涼剤のような効果を求めて今は観たくなる。


ただ、あまりに出演者が輝き、眩しいので、終演後、出口に並んで微笑んでいるその姿のいくつもの目をとても見ることができず、まるでやましさを持ったように、目を合わせずに仏頂面で出口を急いでしまった。しかたないことだ。

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