2月24日(日) 広島市中区榎町にあるフレンチ・ビストロ「ラ・クロンヌ・ドル」でデジュネを食べる。

広島市中区榎町にあるフレンチ・ビストロ「ラ・クロンヌ・ドル」でデジュネを食べる。


前菜は、キスのベニエで、運ばれた時から、サフランだろうか、衣に混ざっているであろう香辛料が鼻をつく。和らいだ苦味のクリーミーな菜の花のクーリーと、酸味のある卵黄だろうか、ニンジンだろうか、さっぱりしたオレンジソースをつけていただく。雲のように軽い衣の中にはエビと思うほどの淡白で身のふっくらしたキスだ。オリーブオイルのあえられたリーフの苦味と辛味が重心を添える。ピンクペッパーの粒は甘みを感じ、果実として刺激を与える。


ワインはイタリアのらしく、木苺のような香りに、タンニンのしっかりした味わい。後々、爽やかな果実の香りがより増してくる。ただ、白にすればよかった。


とうもろこしのポタージュは、最近飲んだ他の店に比べると温度は高く、スープの表面に載ったミルクの泡立ちをかきまぜると甘い香りが上がってくる。とうもろこしの風味は一段と含まれ、温度が高くても味わいはぼけておらず、たしかな濃厚な味がおいしく、ワインと合わせるとベリーの味が鮮明な色を持って膨らむ。


バゲットは外側がカリッと、中はモチっと、有塩バターがとても合う。これだけで食べられてしまうからもったいない。


シタビラメは、トーストが乗り、その間にエビのムースが挟まれてオーブンで焼かれている。ソースはエビの殻の内側の旨味と風味にフュメが濃縮されていて、ウニやカニミソのようなこくのある海の味わいだ。シタビラメの身は淡白で臭みなく、エビのムースはソースの風味と異なったすっきりとした豊かな味わいがあり、段違いの甘い香ばしさで焼かれたトーストのさくっとした食感の3つが合わさり、それぞれの主張の強さの中で白い魚の身がすべてを支える。ただ、白ワインのほうがよかったのではと、疑問が浮かぶ。添えられた野菜は甘く、程よい酸味に、歯ごたえの残った食感で口をさっぱりさせる。コリアンダーシードがあり、味付けの一役を噛みながら確かめる。


デザートは、アマレットがうっすらと風味をつけたプリンに、木苺のソースがかかる。ソースは酸味がなめらかで、しっかりした存在感があり、白いぷるぷるもこのうえなく味がつまり、雪見だいふくにかかる白い粉のようなもので膜がはり、スプーンですくうと、広がらず、水銀のように丸い玉のまま露に踊る。性格の違うクリーミーな甘さに、深みのある艶が混ざり、デザートとしての役割を文句なく果たす。


コーヒーは、深みがあり、澄んでいて、クラシックな味わいで泡もおいしい。抹茶粉に着飾られたダイスのチョコは、紫がかった色のある醸造酒の香りがして、色っぽくも、抹茶が気の利いた苦味のコントラストを生み出す。


今日の給仕は、2人の若い女性で、飛ぶことを覚えたばかりの若鳥のようだ。説明はすこしおぼつかなく、リズムによどみはあるが、気配りがあるから好ましい。


半年ぶりに来たのだろうか。フランス料理の奥行きを知らないから、この価格でこの味を楽しめるのだから、今の自分は満足だ。

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