2月9日(土) 広島市中区十日市町にある「蕎麦屋香月」で鳥だしのつけだしそばの白を食べる。
広島市中区十日市町にある「蕎麦屋香月」で鳥だしのつけだしそばの白を食べる。
広島で蕎麦屋に数店しか行ったことないが、ここの店が最も好みだ。今日は白を食べ、細切りのそばを咀嚼すると、どんどん蕎麦の風味が口に広がってくる。ライ麦、全粒粉、玄米、最近はこういう野趣に近い存在感のある風味も楽しめるから、この店の蕎麦の風味がおいしい。
ここの蕎麦はそのままでも完食できるほど味わい深い。塩があればもはや十分に思えるが、つゆにつけてもおいしいから迷ってしまう。選択肢が色々あることを喜ぶべきだろう。
今日は温かい鶏だしのつゆを頼み、テーブルに運ばれる前からつゆと柚子の香が鼻をくすぐる。一味も香る。
柚子と一味の強いつゆは割に濃い。蕎麦をつけて食べると、柚子、一味、つゆが一体となって蕎麦を包む。大きな三つ葉が爽やかに口に香り、斜めに切られた細身のネギは、鮮度が良い。甘く、きれが良く、スマートだ。鶏肉の肉片も小さいながら、つんと顔を持ち上げるような小気味の良い、風采の良い味が広がる。旨味のつまった鶏肉だ。いつも思う、この店はすべての食材が選り抜かれている。
蕎麦の乗る皿は厚み1センチ以上ありそうな備前焼のような武骨さで、重く、よく冷えていて、裏をひっくり返せば水滴がついており、蕎麦をじっくり冷やすための受け皿として準備されていたことがうかがえる。つゆの入る器は釉薬のかかった陶器で、手に吸い付く。渋すぎないが、落ち着いた色合いに、優しい肌触りだ。
そして、蕎麦を食べるリズムがとても好きだ。夜の開店直後に来たから客は自分一人で、ゆったり席が配置された明るい木の色合いに落ち着く店内は、ラーメン屋や汁なし担々麺屋とは違い、のんびりと味わいながら時間を過ごせる。このリズムこそ、蕎麦を食べる醍醐味のひとつなのだろう。
蕎麦湯を飲み干し、会計を終えて帰ると、前と同じく「おおきに」と店主は口にする。
これが悪くないのだ。
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