12月20日(金) 広島市中区基町にある広島市映像文化ライブラリーで森谷司郎監督の「首」を観た。

広島市中区基町にある広島市映像文化ライブラリーで森谷司郎監督の「首」を観た。


1968年 東宝 100分 白黒 35mm

監督:森谷司郎

脚本:橋本忍

出演:小林桂樹、南風洋子、神山繁、清水将夫


猛烈な風と雪の中で、盛り上がった土饅頭の墓の前に、物凄い形相の男がいる。


それからやや退屈に事件は取り上げられる。死亡した男、その原因、働いている場所、関連を弁護士はとりあげていく。


じわりじわりと物語は進んで、事がうまく運ばない苛立ちと焦りが、とある言葉によって突然変調する。首、この人間の部位を表す言葉が、これだけでなにやら物騒であり、妖艶な意味を思い起こさせる言葉が、前半の展開で蓄積鬱屈した力を噴火させる。


それからは緊張感のある映像と演技に呆然とする。小林桂樹の取り憑かれた演技に、動揺する周囲、飄々とする加担者、戦時中の汽車の人々、猛烈な雪と雨、薄ら寒さにオブラートされて、当人の異常な熱情と、専門家の達観したような冷静さの妙が怖気をふるう。


ホラー映画なのだろうか。茨城の鉱山町の映像は美しく、荒れ狂う雪と風は過剰で素晴らしく、小林桂樹の演技は脂が滲み出ていて、アクがある。


このアクに魅せられるのは、アクのない生活、アクのない職場、アクのない現代だと信じ込み、慣れきったものに退屈を覚えているからだろう。

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