10月27日(土) 萩の黄檗宗東光寺を観る。

萩の黄檗宗東光寺を観る。


ここは、仙台藩主伊達氏の菩提寺である大年寺、鳥取藩主池田氏の菩提寺である興禅寺、それらに並ぶ黄檗三叢林である長州藩主毛利氏の菩提寺である東光寺だ。


といわれても、寺社に疎い自分にはよくわからない。黄檗宗という禅宗があるのさえ知らなかった。


建築物は中国の明時代の末から清朝の初めにかけての黄檗伽藍様式らしいが、まったくわからない。そう言われると、屋根は中国らしく反り返っているように思えてくる見識の浅さだ。


ただ威風は感じる。総門を抜けて三門へ続く道からして古刹に漂う厳かな雰囲気があり、ベンガラに塗られた赤い門と違い、木の素朴さによってこちらのほうが古いと思わせる日本的な味わいが巨大な額縁となり、三門の奥には哲学じみた道が遠近法でどこまでも続いて見える。


鐘楼、大雄宝殿、木魚や鬼瓦など見どころはいくつかあるが、もっとも見ごたえ、感じがいがあるのは毛利氏廟所で、ここは奇をてらったインスタレーション作品なんかよりもはるかに五感を刺激する空間となっており、石橋を渡った先の小さな門で引き返す女性二人組の観光客がいたほど、入ってはいけないと思わせる厳しさがあり、重々しさを耐えて門を抜けてみれば、石灯籠が整然と並び、それはまるで毛利氏を守護する家臣のようで、鳥の囀りさえ許さぬ威容に広がっている。古の墓に通じるたしかな記憶を持たない遺跡らしさがあり、墓石は黒やら白に風化して、土台は苔むし、巨大な人類史の一幕を見るようだ。


この寺には京都禁門の変で自刃、処刑された人達の墓もあるが、毛利氏の廟所が際立っている。ここは紛れもない観光地としての風格があり、誰でもその違いを感じられるほどの空気がある。

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