10月6日(土) 広島市中区加古町にあるJMSアステールプラザ内オーケストラ等練習場で「広島交響楽団の公開練習」を観た。

JMSアステールプラザ内オーケストラ等練習場で、広島交響楽団の公開練習を観た。


第384回定期演奏会のリハーサルは、昨日と一昨日もあったので、この日が三日目になる。初めて公開練習を観て、面白いだろうとは思っていたが、これほど面白いとは思いもしなかった。


この日は曲を通して演奏して、それから細かい点を調整するような形だった。その通しの曲を、大きいホールに比べて狭まった空間で聴くので、音の規模と密度が大きく、音圧は今までに聴いたことのないもので、リハーサルで並々ならぬ感動を覚えてしまった。


細かい音の出し方や、低音部の和音の音程、音の入りに切り方と、聴いている自分には完成されているとしか思えないのに、下野さんの耳には、頭の中で描かれているイメージとの誤差が見えているので、順々に追って微調整がなされていく。その注文と伝達手段が面白い。本当に難しいことをしている。プロの音楽家の感覚を目の当たりにすることで、音楽への理解がより専門的で、楽器演奏しない聴者にはまるで届かない領域を、想像して楽しめる。


受けての判断した言葉はいつだって的はずれだ。劇でも映画でも食事でも、自分の述べていることはいつもでたらめで、実質からずれた単なる言葉並べでしかない。それが好きだから単語を自分の好き勝手に配列するだけであって、それは作り手からすれば意味の狂ったものでしかない。


しかし、人と人の会話のなかで、喋り手がこれほど簡単な言葉と抑揚、表情と身振り手振りで伝えても、意味を理解されないことが多くある。言葉でも、音楽でも、何でも、常に話し手と受け手は伝言ゲームの被膜に邪魔されている。天気、体調、気温、時間などの小さな外的要因から、生まれ育った環境、知能の良し悪し、性格のねじれなどの内的要因まで、様々な条件が受けた感覚を乱反射させて、頭の中で総合的に受け止める。


そんなことを考えながら、公開練習を楽しめた。少しでも正確に、意図する表現を感じられたら、相互に良いだろう。さらに、作り手では見えない、受け手だけが持てる特別なものを発見できたら、もっと良いだろう。


明日が楽しみだ。

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