8月17日(金) 広島市中区十日市町にある北京料理「桂蘭」で飲茶ランチを食べた。

十日市町にある北京料理「桂蘭」で飲茶ランチを食べた。


職場から歩いて約30秒のこの店は、いつも年齢層の高い上品な方々で混み合っている。


卵のスープは、油が浮いているのに澄み切ったダシによる薄味で、控えめながら、小さい音でも遠くまで響くような質だ。平たく、細切れながらも、卵は噛むと弾力があり、とても歯ごたえがよい。


海老蒸し餃子は、半透明のみずみずしい皮は、すこし厚くもすっと歯が入り、滑らかな表面のつやつやした優しさが快く舌と触れ合う。海老は太く、丸くつまったまま白い琥珀で眠っており、臭みのないうまみが弾ける身からどっと広がる。さっぱりした酢醤油はうまみを引き立てる。


小籠包は、ぷるんとした見た目どおり中に汁が閉じ込められており、酢につけて口にいれると、袋が破れて、抑えのきいた豊かな肉汁が溢れて、爽やかな酸味と合わさって、口の中に疑いようのない贅を感じる。針生姜も一緒に口に入れると、鮮烈な辛味が鋭く刺すも、邪魔をせず、肉汁のうまみをより明確に示してくれる。


中華ちまきは、甘いもち米がしいたけのだしと醤油をしっかり含み、味のしっかりついた角煮や、たけのこが風味を伝えて、力をみなぎらせる効能を感じる。味は整えられているも、料理自体が家庭の暖かさを否応なしに引き寄せる。


胡麻団子は、もち米と何かの餅皮が柔らかく、噛むと胡麻が一斉に香りを放ち、中の餡が表情を和らげる。食後のジャスミン茶は、香りは芳しくも、上品な苦味が支えているので浮ついておらず、胡麻団子とよく合うこと。


こんなに美味しく、良心的な価格のランチを食べたあと、職場に戻ると、ちょっとした旅行を味わったようで、無機質な鉄の階段を登りながら、聞き慣れた階段を登る音がやけに空々しく乾いて聴こえ、家での昼御飯から帰ってきた時とまったく違った音だと考えて、やっぱり小さな旅行で、平日の昼休憩をこのように楽しむことができる発見が喜ばしくも、後ろめたさというより、平日には眠っている休日の自分を昼に連れてきたようで、むしろこのギャップが心痛くもあるが、美味しいランチを食べる時間を、わざわざ遠ざけることもないと思った。ちょっと酒を飲んでほろ酔いで働くような罪悪感だ。

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