第22話 意外性と知らぬが仏

 南雲は着替えながら、見た夢を思い出した。

 それは、実際に過去に起きたことだった。


 *


 高校に入学してすぐのころ、南雲は葉山と出会った。それは本当に些細な事だった。

南雲は毎朝ギリギリの時間に校門をくぐる。葉山はその時間に、校舎の自販機で飲み物を買っている。本当にただそれだけだった。

そして、南雲の高校生活が二年目に入ると、二人は委員会で一緒になった。

初めは話すことはなかったが、委員会の集まりの時に何度か目が合い、それが七回目の時に葉山から話しかけた。

「きみ、毎日遅刻してるよね」

「遅刻じゃなくて遅刻ギリギリです」

これがファーストコンタクト。

それから何度か話すようになり、休日に遊ぶ約束も立てた。葉山はとても綺麗で、頭もよく、一緒にいると楽しかった。何度か唇を重ねることもあった。

三度目の遊ぶ約束は、葉山の家にお邪魔する予定だった。

その約束の二日前に事件が起きた。


南雲が何度目かの居残りをさせられて帰る時、校舎裏で葉山を見つけた。

葉山の周りには、肩幅の広い大きな男子生徒が三人立っていた。

南雲は近くの物陰に隠れ、様子を見る。

すると、一人の男子生徒が自らのズボンに手をかけ、それを下ろした。

露わになったソレを、葉山は口に含み――。

よくいう不純異性交遊というやつだった。


南雲は呆けて動けず、その行為を最後まで見た。見てしまった。

校舎裏で裸になり、三人の男を相手に、笑顔で腰を振る葉山のその顔は、南雲の知っている葉山ではなかった。南雲の中の葉山の像が音を立てて崩れていた。

四人が帰った後、少ししてからゆっくりと家へ歩き出した。


 *


 南雲が着替え終えると、扉がノックされた。扉を開くと、身支度を済ませた葉山が立っていた。

「速いですね」

「毎朝の日課だから慣れたのよ、私も朝は弱いのよ」

 南雲は平然を装う。

「じゃあ、早くみんなのところに行きましょうか」

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