第7話 覚悟と過去
* 2日目
朝七時。扉のノックの音で目が覚めた。
テーブルの上には、空のペットボトルと赤い封筒。着ている寝間着は、部屋のクローゼットにあった。他にも歯ブラシなどの生活用品も用意されていた。
返事をすると扉が開いた。
「おはようございます。朝食の用意ができました。昨夜はよく眠れましたか?」
一樹はクローゼットから制服を取り、着替え始める。
「そんなわけないでしょう。急に殺しあえだなんて言われてちゃ」
睨んでやると、そうですか、と興味なさげに隣の部屋へ向かった。
「ですが今夜は決断しなくてはいけない夜が来ます。ご覚悟を」
*
食堂には人が一人いた。窓の外、空を眺めている。
「優夏先輩――」
制服姿の葉山はとても美しく、高校の中でも一位二位を争うほどの人気で、多くの人に支持される。その支持者の中に、過去の一樹も含まれていた。
「あぁ、南雲君。おはよう」
「おはようございます」
葉山は一樹に微笑み、窓に目を戻す。空は、曇天だ。雨が降っていないことがおかしく思えるほど真っ黒だ。部屋も夜ほどではないが、かなり薄暗い。
「雨、降らないですね」一樹は昨日の夜に座っていた椅子に座る。
葉山とそれを取り巻く風景が、見惚れるほどに美しい。自然に溶け込み、自然に輝きを与えるような、そう錯覚させるような。
「南雲君」葉山が振り返り「久しぶりだね」一樹に微笑みかける。その頬に浮かぶえくぼを見て、どきりと心臓が脈を打つ。
ギィと扉が開く音がした。
「あら、二人とも早いですね」
少しだけ開かれた扉から九城が入ってくる。ちなみに九城もお金持ちのお嬢様なので、高嶺の花だが人気がある。
「おはよう、九城さん」
「葉山さんおはようございます。昨日はお薬ありがとうございました」
「こらこら、誤解されるような言い方しないの」
葉山が、最初は少し驚いた表情をしたが、いつも通りの笑顔で九城の近くに寄る。
「南雲君、薬って言っても頭痛薬だからね?」
「でも、なんで先輩が?」
「そりぁあ執事さんに頼んで薬をもらったからよ」
ギィと扉が開き、西川、水沼、蓬、京也、七ノ瀬、遠野が入ってくる。葉山が微笑む。遠野は相変わらず周りを睨むように見ている。七ノ瀬はかなりやつれていた。目の下にはクマが出来ている。水沼は、こんな状況下でも生き生きしていた。
「水沼先輩元気そうですね」
それぞれが席に浮かう中、一樹が少し呆れた顔で告げる。
「だってまだ本当に殺し合うって決まったわけじゃないんだろ? 今のうちに抜け出しておけば誰も殺さないで済む」
水沼は、着崩した服や顔に似合わないような優しい表情をした。
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