きゅっきゅちゃん、九匹目

「結構長話してしまいましたね。もうこの家にお邪魔することはないですけど……ま、何かあったらサテライトで教えてください。見物し……失礼、助けに行きますよ」

「道楽だな? 俺をおもちゃにする気だな?」

「そんな……そんな訳……9割本気ですが」

 真顔で言ってのけやがる。

「サイテーだー!」

 うわぁ、道楽だ! 助けるとか口だけだぁ!

 ……まぁ、マジでやばい時は助けてくれるだろう。

 俺をおもちゃにする気は多分にあるだろうが、見殺しにはしないだろう。

 おもちゃだって大事にしたい派だろう。こいつは。

「直近は今週末ですか。現地集合で良いですかね?」

「見に来る気か!?」

「きゅっきゅちゃんの裏設定知りたくないですか」

「知りたいけど裏設定とかメタなこと言わないでください」

 軽口を交わしつつ澪夢が結界を解除する。

 時計を見れば思ったより進んでいない。

 結界の効果か……時空の流れ調整しましたね?

 見れば澪夢は小さく舌を出していた。

 ばれてることばれてーら。

 ってか、オチャメだな? 見た目によらず。

 台所に顔を出して澪夢が何か言っている。 

 どうせお邪魔しましたとか、そういうのだろう。

 すぐに母親が小走りで向かってきた。

 だから俺は母親の後を追いかけて澪夢を見送る。

「またねー」

 と澪夢に手を振れば、澪夢は軽くお辞儀してから帰っていった。

「粗相してないでしょうね? ……心配してないけど」

「普通にしてたよ?」

 母さんが眉を下げて笑む。

 それに俺は首をかしげた。

(何をしんぱ……あぁ、まぁ。そっか。副知事が直々に挨拶に来たんだもんな。なにしたんだってなるか)

 つか、どう誤魔化したんだろう。

 あ。

 ふと俺は嫌な予感がして母さんをみる。

「かあさん、澪夢さん何言ってたの?」

 まさか、俺のスキルのこと言ってないよね?

 不老不死とか。そこらへん。

 母さんは不思議そうに首をかしげて「たいしたこと言われてないけど……」と答えてくれる。

 声色的に誤魔化しや嘘を言ってはいない……。

 なら、いいか。

「ご飯なにー?」

 にぱっと子供らしく笑んで俺は問いかける。

 それに母さんはすこし安堵したように笑んで

「今日はハンバーグよ。お誕生日だし、ご馳走を用意したわ」

 答えながら家に入っていった。


「わーい、たのしみ!」

 そういいつつ、俺はその背を見送り、振り替える。

 俺の生まれた家。

 小さな庭のある、2階建ての一軒家。

 両サイドに並んだプランターは母さんが手入れしていて、いつもきれいな花々が咲き乱れている。

「……」

 石畳が門から玄関まで続いていて、松やら楓やら木々が所々に生えている。

 これは爺さんが残してくれたもの。

 和風の、こじんまりとした庭園。

 縁側つきの我が家。

「日本っぽいのは、優樹の気配りなんだろうか……」

 ぼつり、と呟いてから俺も家に戻ることにした。

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