夫の視点

チャージングハンドルを引き、薬室にカートリッジが入っていないことを確認して28発装填された弾倉を差し込む。今日のルートを端末で確認しながら、あの店まだワインがあったかどうか考えながら装填した。


5月も中盤というのに寒かった。連日続く強くもなく弱くもない雨にうんざりしながら集合場所に向かう。日が昇る1時間ほど前、経済活動をする人々よりも行動開始時間は確実に早い、その分終わる時間も早いが定時に集合場所に無傷で戻れる人間はどの程度かということが問題だった。


集まった人間を見回して1人いないことに気がつく。聞けば3日前から高熱、背中に腫瘍が発生し隔離施設に収容されたと。全員が安心と悲しみが混じったような顔をする。あと数日で彼が退職できること、誰かが彼に対して引き金を引かなくていいこと、そして何より彼が我々を殺そうとしなくて済むことに対しての感情だった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る