第13話 火山鼠《ヴォルカンラット》

ヴォルカン火山内部は、二十階層になっており、上へ行くほど魔物は強くなっていく。


そして僕が今回倒す魔物は一階層に生息しているヴォルカンラットというネズミの見た目をした魔物だ。


体長は七センチから十センチくらいで、魔物の中では比較的小型だ。そして僕のような銅帯の冒険者でも簡単に倒せる、難度五の優しい魔物でもある。




僕は火山の中に足を踏み入れた。


中はむわっとした熱気で篭っており、至るところでマグマが流れていて、溜まって湖のようになっている所もある。マグマが放つ光が岩肌を薄暗く照らしている。


僕は、グツグツと煮えたぎるマグマの中に落ちないように慎重に奥へ進んだ。




「暑いなぁ……」


僕はそう呟き、右手で額から流れ出る汗をぬぐった。


まだこの火山に入って数分しか経っていないのにもかかわらず、僕の顔や全身は汗でびっしょりと濡れていた。


あまりに暑いので上に羽織っている薄いジャケットを脱ごうとした瞬間に、岩陰から奴が一匹現れた。


「お、やっと出てきたか」


僕は剣を抜き、構える。ヴォルカンラットもその特徴的で大きな前歯を剥き出しにして僕に威嚇した。


僕をその威嚇に警戒して、柄を強く握る。


すると、ヴォルカンラットが、その小さい前足からは想像できないほどの跳躍力で、僕の顔までジャンプしてきた。


「せいっ!」


僕はヴォルカンラット目がけて剣を縦に振った。


ちょうど真ん中で切れて、真っ二つになったヴォルカンラットの死骸がぽとっと落ちた。


「やっぱり難度五の魔物は倒しやすいなぁ」


依頼されているヴォルカンラットの素材である前歯の数は三個。すなわちあと二つ集めなければいけない。


僕は目当ての素材であるヴォルカンラットの前歯を収穫して、先に進んだ。







あとの二つも簡単に集めることができた。


「やっぱり簡単だったなぁ」


全てを終えたので来た道を帰ろうと振り向いた瞬間、後ろから物凄い大量の足跡がこちらに迫ってくる音が聞こえた。


振り返ると大量のヴォルカンラットが僕を目がけて走ってきていた。


[ドドドドドドド]


「は!? え!? なんで!?」


突然の出来事だったので、僕は一瞬体が硬直してしまったが、やっと思考が追いつき逃げるべきだと考えた。


僕は全速力で出口に向かって走った。


走っている最中も、後ろからは大量の足音が聞こえてくる。


とにかく一心不乱に走った。


走って、走って、走りまくってー


なんとか出口までたどり着くことができた。


火山を出て後ろを振り向くと、そこにはもうヴォルカンラットの姿はなかった。


「はぁ……はぁ……なんとか逃げ切れた……」


僕は安堵し、その場に倒れこんだ。


「でもなんで急にあんなに大量のヴォルカンラットが追いかけてきたんだろう……」


その後の帰り道でも考えていたが、結局僕には分からなかった。






そして次の日、とうとう次のランク帯である青銅帯に上がることができる日が来た。

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