ごめんよ、トランペット(2010.1.28)

オレはエアだから・・・

そう言ってヘラヘラ笑えてるうちは、まだ良かった。

”エア”とは、エアトランペットのこと。

にこやかにトランペットを吹く振りをする、精神的に高度な技だ。


オレがトランペットを始めたのは、映画スイングガールズが発端。

職場の仲間の中で、オレ達もジャズやるべと盛り上がった。

映画を参考にして中古店に行くと、トランペットを一万円で売っていた。

楽器はウン十万するもんだと思っていたオレは、思わず買ってしまった。


さて、

買ったはいいが、どこで吹けばいいだろう・・・

はたと思い付いたのが、グラウンド。

いつも昼休みにサッカーをやっていた。

足の怪我で手術したばかりのオレは、サッカーができなくなっていた。

翌日からサッカーを見ながら、トランペットを吹き始めた。


不思議なもので、誰かが始めると似たような人達が集まってくる。

昼のグラウンドは、いろんな楽器で賑わい始めた。

トランペット、サックス、トロンボーン、クラリネット・・・

ジャズのメンバーも充実し、演奏曲もだんだん難しくなってきた。


お、音が出ない・・・

曲の難易度が二倍になると、トランペットは十倍難しくなるような気がした。

最初、ん?と思ったスイングガールズの演奏が、神のように思えてくる。

だが、バンド的には問題はなかった。

オレが居なくても、他のメンバーが充分カバーしてくれていた。


オレはエアだから・・・

これは照れ隠しの言葉だ。

エアに近い実力だけど頑張って吹くから聞いてくれ、という願いが込められている。

しかし、リアルにエア状態に陥ったオレは、

エアだからと言える余裕がなくなっていた。


トランペットを習いたい。

真剣にそう思った頃、足が治った。

今では、ジャズのメンバーを見ながらサッカーをしている。

ごめんよ、トランペット。

習いたいのは本当だったんだよ、と心の中でつぶやきながら・・・




<2010年1月28日投稿>

はてなダイアリー 今週のお題「やってみたい習い事」

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