時をかける日記

トモイチ

第1話

 三宅京子は、学校の友達と一緒にバンドを組んでいる。

 一年前にはさしてその手に興味がなかった彼女だが、とあるきっかけが彼女の人生を変えた。

 一年前の文化祭。友達に誘われて見に行ったとあるバンドのステージで、奇妙な体験をした。聴いている皆を魅了する歌声と、心に響いてくる演奏。友達が無理矢理にでも京子を連れてきた意味がよくわかった。単純だが、一瞬で京子もそのバンドのファンになった。その格好いい姿に憧れた。自分もああいう風になりたいと、心の底から思ってしまうほどの感動が押し寄せてきたのだ。

 そのバンドの最後の曲。バンドはこの文化祭を機に解散とのことで、正真正銘最後の曲だった。演奏の途中で、ボーカルの女性は何か本のようなものを観客の方へ放り投げた。

 落下地点はちょうど京子の手におさまる場所だった。タイミング良くキャッチをしてふと顔を上げると、ボーカルの人と目が合った。情熱に満ちた眼がウインクを返してきた。

 キャッチしたものは日記だった。筆者の名前はなく、月日のみで年はどこにも書かれていない。一ページ目はちょうど文化祭のこの日。ただ一行『私は決心した』と書かれてあった。

 日記を返そうにも、演奏を終えたバンドのメンバーはたくさんのファンに囲まれ、とても近寄れない雰囲気だった。仕方なく日記を家に持ち帰り、京子は空いた時間にそのページをめくった。

 日記には、筆者が友達とバンドを組み、最後は学校の文化祭に出て成功を収めるまでのことが記されていた。

 あの興奮をわすれられない京子には、まるで未来のことが書かれているかのように感じた。

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