〇二七
君は幻日教団の里を散策することにした。
信奉する神の怒りを買って国を喪った者たちの里。マダラメイア神に対する罪悪感を根源とした宗教的憂鬱が里に満ちているように感じられる。
君の抱いた印象を代弁するかのように、声がした。
「けっ、辛気臭ぇ街だ」
君の首筋にひやりとしたものが走る。
まるで刃物の腹で撫でられたような感触に、君は振り返る。
「くはははは、よく気が付いたな、冒険者」
その男は、君の数歩後ろでほくそ笑んでいた。
異邦人。
そもそもローランダルクが君にとっては異郷だが、その男は輪を掛けて異質だ。
東蛮の騎馬民族が纏っているような袍衣をさらに緩くしたような不思議な着物を纏い、それらを帯で締めている。腰に提げた刀剣は長さの割に細く、なだらかに湾曲し、異様な緊張感を放っていた。
そして何より、同じように腰に提げた巨大な容器が君の目を引く。数字の「8」のようなくびれた形をした容器には液体が詰まっているらしく、男は時折それに口を付けては、酔ったように息を吐いた。
もしも君が他の巡礼者の情報を得ていたならば、彼が何者かを悟るだろう。
「よぉ、俺はアズラ=アドラシエルっつーしがない剣人だ。テメェも巡礼に来たクチか?」
アズラは、羽織った着物を右肩だけはだけさせ、肩に浮かぶマダラメイアのしるしを示した。
「まぁ、お互い仲良くしようじゃねぇか。願いを叶えられるのは一人らしいがな」
アズラが踵を返して去っていこうとする折、君は首筋に鋭い痛みを感じた。
手を触れると、焼けるような赤が君の手にこびりつく。血だ。
君はいつの間にかアズラに傷を負わされていたのだ。抜身さえ見せない必殺の刃、遥か東の地に聞こえる剣豪の技だろうか。
「今のは挨拶代りだ。次会ったときはこうはいかないぜ」
アズラは呵々大笑し、去っていく。
君は3点のダメージを受けてしまう。
だが、一度彼の剣を受けておいてむしろ良かったのかもしれない。もし彼と敵対することになっても、次はきっとあの必殺の一撃に対応できるだろう。
【〇二〇】に戻りたまえ。
【https://kakuyomu.jp/works/1177354054888453186/episodes/1177354054888479166】
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