2-3
「この後カラオケでも行く!?」
「あ、いいねー」
会場の外では、男女のグループがそんな話をしている光景が目に入った。
俺と二科は
結局二科としか話せないままにイベントが終わってしまった……。まあ、あのまま帰ろうとしていたのだから、どちらにせよ
「
気付けば
「
二科のショックを受けている様子を見て、こいつも今日のパーティーに俺と同じくらい、もしかしたらそれ以上に、期待して気合いを入れてきたのだということが分かった。
「で、でも、お前だったら彼氏なんて学校とか友達の
俺と
「さっき言ったでしょ、私学校ではオタク
「ああ、まあ確かに……」
「だからわざわざオタクの出会いの場を探して、勇気出して申し込んだのに、それなのに……」
……ん? 待てよ。つまり、ってことはもしかして……。
「じゃあ、い、今まで彼氏できたことは……?」
「だーかーらー、オタクと付き合いたいのにオタクの知り合いゼロなんだから、無理だったんだってば!」
つまり……俺と同じく、恋人いない歴イコール
こんな見るからにビッチっぽい女が……マジかよ!
い、いや別に、だからといってこいつが俺の好みとは真逆であることは変わりないし、だからどうってことはないのだが……一気に親近感がわいたな。
オタクの恋人が
リア充と陰キャで、学校での立場は百八十度違うってのに、皮肉なものだ。
俺たちは互いに
「ねえ……一ヶ谷って、オタク友達とかいないの?」
二科の顔を見ると、期待に満ちた
もしかしてこいつ……俺のオタク友達を紹介してもらおうと期待してるのか? そこまで出会いに必死なのかよ。
「学校に一人いるくらいで……あとはツイッターで
「へぇ~!」
明らかに目を
まあ、こいつが彼氏に求める条件が本当に『オタクであること』だけなら、中学の時の友達などでオタクの男を紹介することは可能だ。だが……。
「一応参考までに聞いとくけど……お前が期待してるオタク男子ってどんなだよ?」
「えっと具体的にはー、
「そんなオタクいねーよ!」
思わず言葉を
どんだけオタク男子に理想を
「えー!? いやいや、いるでしょ! 別にめっちゃイケメンを求めてるわけじゃないんだよ!? 男性声優によくいるちょっと
「男性声優ディスってんのか?」
「じゃああんたはどんなオタク女子がタイプなわけ? なんかさっき、今日
話しているうちに秋葉原駅
「俺のタイプ、か……。そうだな……」
改めて、想像を
「まず黒髪ロングの
「バカか?」
「……えっ!?」
バカ? 今バカって言われたのか? 俺。
見れば、二科は
「あのさあ、それマジで言ってんの? 頭
「お前にだけは言われたくねーよっ!」
「っていうかさあ、まずあのパーティーにあんなにたくさん女子がいて、『特別可愛い子がいない』って……あんた、どんだけ面食いなの!? 自分の顔鏡で見たことある!?」
「なっ……!?」
い、今俺、めちゃくちゃ
「べ、別に俺だって自分をイケメンだなんて
「イケメン
「クッ……!」
二科の言葉の
「ぜ、全然身なりに気を遣ってない……? 今日はパーティーだから、一応、自分の持ってる服の中で一番マシな服着てきたんですがそれは……」
「それが一番マシな服……!? そのクソダサい英字の
「……っ!? オ、オタクファッションのテンプレ……!?」
自分の身に着けているアイテムを
「あんたはまず、こういうところに来る前に、ファッション誌買ったり、
「……くっ……」
言い返したいが、服装に関しては二科がお
「でっでも……オタク女子だって、変に
「そりゃあそういうオタク女子は多いよね。だから今日のパーティーにもあれだけたくさんの女性参加者がいたんだし。まあ多分、
「え……」
「間違っても、あんたみたいな外見からして一目でオタクって分かるタイプは好かれないだろうし、それより何より……BLとか乙女ゲーが好きな子はちょっと、って言ってたよね? 自分もオタクのくせに女子のオタク趣味は全否定、ってマジ最悪だから。そんなんだったら趣味を認めてくれる非オタ男子の方が数千倍いいから」
「な、な……!?」
ただでさえショックを受けていたのに、その上に
別に俺だって、
でも、その考え自体が良くないということなのか……?
「っていうか、なんでお前に全オタク女子の好みが分かるんだよ!?」
「そりゃあ私自身がオタク女子だからね」
つまり二科は、オタク女子の視点から発言してるということか……?
「つーかなあ、さっきから言いたい放題言ってくれてるけど……俺がオタク女子に好かれないってなら、お前だってオタク男子から好かれるタイプじゃねえからな!」
「え……?」
ここまで散々
「お前がさっき言ってた……黒髪で地味だけどよく見ると格好良くて、ゲームが強いオタク……だっけ? 万が一そういう男がいたとしても……そういう奴はお前みたいな女は絶対好きにならないからな!」
「な、な……!? なんであんたにそんなこと分かるのよ!?」
「俺自身がオタク男子だから、オタク男の趣味は手に取るように分かんだよ! オタク男子はなあ、ほとんど
「私とは真逆!? 清楚系……?」
二科はショックを受けた様子で、ブツブツと
「……そ、それって、確かな情報なんでしょうね……?」
「まあ、大体のオタク男子には当てはまると思うけど」
「そこまで断言するなら……そのオタク男子にモテるオタク女子、ってのを、私に教えなさいよ!」
「えっ……?」
二科は
「あんたがちゃんと確かな情報を教えてくれるなら、私もオタク女子にモテるオタク男子ってのを教えてあげる! それから……オタク女子と出会えそうな場所も、一緒に探してあげてもいいわ」
「ほ、本当か!?」
「その代わり、あんたも私に全力で協力してよね!? どういう女子がオタク男子からモテるのか教えたりとか、あとは……あんたの友達で私が好みなオタク男子がいたら
「!」
今日まで、毎日理想のオタク彼女が
だから、オタク女子である二科が俺に協力してくれるというのなら、こんなに心強いことはない。
「わ、分かった! 俺も全力で、お前にオタクの彼氏ができるよう協力する! 俺の友達にはお前の好みのタイプのオタク男はいないだろうから紹介は無理だけど……オタク男子がどんな女子が好きとかは教えられるし、出会いの場も探してやる! だから……お前も協力してくれ!」
オタク男子が好むオタク女子のことは、
今日、せっかく勇気を出してオタクの
彼女候補は見つけられなかったが、同じ目標を持つ協力相手を持つことができた。
それが、ムカつくことばかり言ってくる、よりによって俺が一番苦手なリア
「よし、そうと決まったら……
「ああ……え!? い、家!?」
俺は二科の言葉に、自分の耳を疑った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます