私は恐らく人間である

三毛猫大佐

雷雨

 私は機械が好きだ。

 機能美ともいえる複雑な金属と金属の部品同士が噛み合い、

 機械特有の異音をたて煙をあげ機能を発揮する様は素晴らしい。


 人型のロボが好きだ。

 無機物だからこそ表れる造り手の造形美は

 不完全な人間体の美など及ばず

 全てを理想的に全てを老いから解放し。

 美を半永久とするのだ。


 叶うならば私はこの身を機械としたい。










 単身者用マンションの一部屋。

 豪雨と雷が続く外界から切り離された様な薄暗い部屋。

 モニターの光に照らされ私はいつもの様にテレビゲームに没頭していた。


 平日は毎日仕事から帰ってテレビゲーム

 休日も1日の殆どをモニターを見る生活だ。

 今日の様な雨の日などは

 飯を抜いてでも家をでないインドア派である。

 この様な生活を一人暮らしを始めて3年は続けている。


 特別にゲームが得意なわけではない。

 ただ楽しいからだ、私の人生において数少ない楽しみの一つだからだ。


 ゲームの進歩は目覚ましい。


 映像は写真と見比べ遜色ないどころか

 理想美が表現されるようになっており。

 髪の毛一本一本の細部まで表現されるそれは

 ユーザーに更なる没入感を与え、

 私をひどく魅了した。


 銃器が奏でる発砲音と狂おしい動作音

 戦車が障害物を薙ぎ倒し破壊し全てを乗り越えていく様

 SFにしかない極小部品による芸術ともいえる美


 そうだ私は特に機械的な物が好きで仕方ない。

 これは生まれ持った性なのだろうか?

 それとも父に無表情から機械の様だと揶揄されてから?

 いや、どうだっていいことだろう。

 とにかく私は機械が好きなんだ。


 カードゲームも機械的なキャラクターを好んで使い

 ロボットアニメと聞けば漁るように見て

 ゲームキャラクターならばパーツを取っ替え引っ替えして遊び倒した。

 だが実際の機械の機構などの知識などはない

 私はあくまで受給者で受け身で消費者なのだ。




 この様な自問自答ともいえぬ脳の無駄遣いの所為か画面に映る操作キャラクターが倒れてしまった。


 私の悪い癖ともいえるコレは治したいと常々思うが、

 治らないからこそ癖と言えるのではないだろうか?それとも何だろうか?


 などと無為を考えようとした時、

 画面にゲームダウンロードを知らせるポップが表示された。

 2時間前に購入したゲームがやっとダウンロードされたようで鬱々とした思考も吹き飛ぶ。

 カーソルを合わせ起動を選んだ。


 その時だった。

 私が死んだのは。

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