エピローグ


「ギンコ、お手」


がぶり。


「痛ってえ!!」


 あの激闘から一晩明けた今日。

 カイトたち三人は、草原エリアに来ていた。

 理由は、昨日の【“青冠”の嶺兎】戦でギンコを手懐ける条件が整ったのかを確認する為であったが、結果としては案の定手懐けることはできてなかった。


「うーん、“予兆”の二つ名なんて十分な脅威を退けたのですから、普通はもう言うことを聞いてもいいと思うのですが」


「あれじゃない、カイトの人徳が足りないんじゃない?」


「馬鹿な。レナをも手懐けることができた俺に人徳が無いわけがない!」


「ちょっと待って、また変なルビ振らなかった?」


「わかってるじゃないか、レナ」


「――大学で友達いないくせに」


「高校ではいたからいいんだよ。大学でも高校でもゼロ人のお前とは格が違う!!」


「はっ、たった三人じゃん!」


「三人だ! ゼロ人のお前と比べたら三倍――いや、ゼロに何をかけてもゼロか、HAHAHAHA!!」


「おっと、それを言ったら戦争だよ?」


 そういって、無言のままそれぞれの得物を取り出す二人。

 いつの間にかいつものノリを始めた二人の間に、あわててナギが入る。


「お、落ち着いてください二人とも! それとカイトさん、ギンコには多分、追加で何か条件があるんだと思います」


「追加条件?」


「はい、多分ギンコはわたしのコナタたちと違って特別製みたいですし。そうでなければ、やっぱり【“青冠”の嶺兎】を倒した時点で何とかなってるはずです。」


 特別製といわれても、未だ初心者であるカイトにはわからない。

 しかし、あのジライヤがただの妖魔を優勝賞品に据えるのもおかしな話だ。

 そう考えるならば、ナギの言葉にも信憑性がある。


「そうだよね、私たちなんだかんだで“予兆”の二つ名なんてとんでもを、倒しちゃったんだものね」


 しみじみとした表情で、レナが呟く。


 そう、カイトたちは、見事にあの【“青冠”の嶺兎】を討伐せしめたのだ。

 倒した瞬間を見ていないカイトからすると実感はなかったものの、落とし穴の底から後で救出されたときに、自分の身に入った大量の経験値と、討伐報酬を確認したことからもきちんと倒せたらしいと思ったそうな。


「まぁ、あの時は言い忘れていたが、よくやったなナギ」


「い、いえいえ。カイトさんたちの御活躍のおかげでわたしも頑張れたので」


 そういって縮こまるナギを見て、くすりとレナが笑う。

 

「いや、あの時のナギちゃんすごくかっこよかったんだよ! カイトよりかっこよかった!」

「悪かったな! 穴の中で昼寝してて!」


「え、でもあの時のレナさんすごく取り乱して――」


「ナギちゃんストーーップ!!」


 そうやってわちゃわちゃし始める女子二人を横目に、カイトは懐からあるものを取り出す。

 それは、碧色の招待状だった。

 実は、この招待状こそが、【“青冠”の嶺兎】討伐報酬であった。


「しっかし、これはいったい何の招待状なんだろうか?」


「生憎、まだ中身は見れませんね。多分キタる日がくれば開けられるのでしょう」


「そうか」


 そう呟いて、カイトはその招待状を太陽に透かすが、やっぱり中身は見えなかった。


「それと、カイトさんがいないうちに、今回わたしたちが得た情報は、“予兆”を探ってるグループの人たちに報告しておきました」


「――ん? なんか情報得たっけか?」


 カイトはそう本気で言った。

 彼からしてみたら、何か“予兆”といえど次のクロニクル・クエストにつながる情報を得た記憶はなかったからだ。


「いえ、あの【“青冠”の嶺兎】の名前が、最大の情報です」


「名前?」


 レナがそう呟くのを聞いて、カイトもナギが言わんとしていることに感づいた。

 【“青冠”の嶺兎】の名前は、示していたのだ。


「そうか、次に来るクロニクル・クエストの内容を示していたのか!」


「はい、それに“影の国”所属のわたしたちが遭遇したということは、襲来するのはこの国です」


「え、どういうこと?」


 いまだに何のことを言っているのかわかっていないレナに、ナギは小さく深呼吸をしてこう核心を言った。








「次のクロニクル・クエストの内容は、【“極青冠”討伐戦】。――“影の国”に襲来する、史上三体目のレイドボス【“極青冠”セイリュウ】の大規模討伐戦です」







――to be continued


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