ACT.22 気難しき銀光(Ⅰ)
「あーあ、なんだかんだでGW終わっちゃったね」
GWが明け、にわかにいつもの騒々しさを取り戻しつつある大学構内のカフェスペースにて、ある少女が呟く。
風に靡く長髪は金糸の如く、その瞳は夏の空のように蒼く透き通った碧眼。
顔立ちもまた偶像のような奇跡的なバランスの美しさを持つ少女だ。
その名前を、
「そうだな、まぁ俺は長期休暇というのが苦手なたちだから、これはこれで助かるけどな」
そんなことを玲奈に言うのは、玲奈とは対極のような青年だった。
針金のような質感の髪は炭のように黒く、猛禽類のように鋭い瞳。
顔立ちもやや鋭利で、背も高く、体躯も細いながら引き締まった印象だ。
総じて、見る人が見れば威圧感をぼぼ得かねない印象だ。
名前を、
「えー、そんな休みいっぱいの方が楽しいじゃん!」
「見解の相違だ、俺はルーチンワークが崩れる方が嫌なんだよ」
そういって慎二は涼しい顔でカフェラテをすする。
そんな慎二に文句ありげな顔で、玲奈は続ける。
「でもさ、それだと『
「――それは、ちょっと残念かもな」
『CO-ROU・THE・CHRONICLE』。
それは今、慎二と玲奈がハマっているVRMMORPGゲームの名前だ。
超常の力を持つ戦士「シノビ」となって、戦国スチームパンクな世界を駆け巡るそのゲームは、すっかり二人を虜にしていた。
「特に君は、ようやく副業も解放されてビルドの幅が広がったから、今まで
で一番楽しい時期でしょ!」
「まぁ、否定はしない」
「それにほら、ジライヤ杯優勝しちゃったしね」
その中でも、慎二は初心者向けの大会で、初めて一カ月足らずの状態で優勝するほどの適正を見せていた。
「あ、そういえばなんだけどさ」
「うん?」
「結局、ジライヤ杯の景品の極・秘伝書ってなんの術が入ってたの?」
何気ない玲奈の一言で、慎二の表情が硬直する。
「やべっ、忙しくて忘れてた」
その言葉に今度は玲奈が啞然とする。
「えーもったいない! ジライヤさんからのだったら絶対すごい奴だよ! 見てみようよ!」
そう言って顔をグイっと近づける玲奈から、じゃかん飛びのくように距離を置いてっ慎二は言う。
「りょ、了解だ。今晩開封してみよう」
▽▲▽
そしてその晩。
二人は、『CO-ROU・THE・CHRONICLE』内で落合い、適当なフリークエストを受け、忍術が使えるエリアまで来ていた。
因みに、クエストカウンター等があるエリアは所謂“安全圏”と言われ、戦闘に類似する行動ができないようになっている。
「さて、それではちょっとやってみますか」
そういって肩を回すのは慎二のこの世界での姿であるカイトだ。
自身のレベルアップとランクアップを経て、尚且つジライヤ杯の賞金のおかげもあって、以前より上等な防具などをつけている。
以前の職業は、【
副業解放もあり、その職業は【
【生存者】は、生き残ることに重点の置かれた職業であり、カイトの奥義とあわせて生半可じゃない生存能力を持つに至った。
因みに、玲奈ことレナには「雑草ビルドだね!」と馬鹿にされたので後でドロップキックかました。
「ちなみに何の忍術入ってた?」
傍らでそんなことをいうのはレナだ。
金銀赤の派手な衣装の彼女は、カイトが手に持つ巻物をのぞき込みつつ、そう聞いた。
「どうやら、【口寄せの術】みたいだな」
「あー、オーソドックスな奴だね」
【口寄せの術】とは、特定の妖魔を召喚し、使役する術である。
口寄せできる妖魔は、術者が直接手なずけなければならない為、強い妖魔と契約したければおのずと専門職である【
そのため逆に、契約済みの術が封じられた秘伝書は意外と多く、秘伝書=口寄せという印象まであるほどだ。
「何が入っているんだろうね? ジライヤ様だから、やっぱガマガエルかな?」
「あー、それも忍者っぽくてアリだな」
そう言いながら、カイトは極・秘伝書の開封準備をする。
秘伝書の使い方は非常にシンプル。
秘伝書を口にくわえ、指定された印を手で組んで術名を唱えるだけである。
そうしてカイトは極・秘伝書を加え、印を組んで術を――【口寄せ】を唱える。
「――いくぞ、【口寄せ:ギンコ】!」
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