嗤う"青冠"
プロローグ
表彰式、そして表彰台とは、華やかなものだ。
瞬くフラッシュと万雷の拍手に彩られ、華々しい結果を残した者たちが祝福される。
栄光というものの、間違いなく光の部分。
なのに、なのに――
「ご紹介しましょう、今回のジライヤ杯優勝者であるカイトさんです!」
「――は、はは」
――その会場は、控えめに言って怨念に満ちていた。
表面上はみんな笑顔だ、拍手もまばらだがある。
だが、その場にいるほとんどのプレイヤーからは、絶望の怨嗟が漏れ出しているような異様な空気感だった。
そう、ここはジライヤ杯特設ステージ。
ジライヤ杯で優勝したカイトは、このステージで表彰されるのである。
しかしながら、このジライヤ杯、競馬よろしく賭けを同時に行っていたのだ。
そこでカイトが――大穴中の大穴と化していたカイトが、優勝最有力候補だったスズハヤを下したのだからサア大変。
カイトに賭けていた一人を除いて、ほぼ全てのギャンブラーたちが轟沈する事態になった。
それでも、この会場にいる轟沈プレイヤーたちが、壇上のカイトにヤジを飛ばしたり殴りこんでこなかったりしないのは、単純なこの
それは、中継されていた決戦が、あまりに見事な戦いだったから。
もし、卑怯な手口で勝ったのなら、表面上ですら祝福されてないだろう。
まぁ、それでもまだ心の中で割り切れていない人たちのキモチが溢れ出して、会場の空気
が若干異界化しているのだけれども。
そんな異界化した空気に若干飲まれつつ、勝利者インタビューなどに答えていったカイトだが、ついにその時が来た。
「――それでは、優勝賞品の授与になります。ジライヤ様の御登壇です!」
ついに来た、そうカイトは思った。
“称号職”という、この
カイトの表情にわずかに緊張が走る。
そして登壇してきたのは、とても“らしい”シノビだった。
陣羽織に派手な衣装を着た、大柄な体躯。そして豪気そうな顔立ちの中年男性だ。
そしてそのシノビ――ジライヤは、カイトに向かってこう語りかけた。
「congratulations! 実にめでたいネ! カイト君、優勝おめでとウ!」
――何故かエセ外国人みたいな話し方だった。
この世界のでは、外国語は自動で訳されるはずだから、変なイントネーションになることはまずない。
なのにそう聞こえているということは、ワザと且つシステムの抜け道をついてしゃべっているのだ。
――なんて無駄な技術。
「Oh~ソーリー、空気悪いのは勘弁ネ」
「――そこは、まぁ仕方ないですし」
「理解早くて助かるネー」
そしてオーバーリアクションでカイトに手を握ってぶんぶんと振る。
カイトは心の中で、この人絶対に欧米人だなと勝手に決めつけた。
「それじゃあ、コレが賞品になるヨ!」
そういって手を解くと、カイトに金色の枠をした白い巻物のようなものを渡した。
「これは――
秘伝書とは、特定の忍術が封じられた使い捨てアイテムである。
これさえあれば、忍術・体術系が四つまでしかセットできないシステムで、五つ目の忍術が使えるようになるという代物である。
――むろん、それなりに高価だったり。
「ノンノン! それは
「うっそ!?」
それを聞いたカイトは慌ててソレを落としそうになる。
極・秘伝書とは、通常使い捨てな秘伝書の中で、繰り返し効果を使用できる代物である。
――当然のごとく、異様に高価且つ貴重なものである。
「まぁ、あれだヨ。上手く
「――彼女?」
「ならMeはこれにてドロン!」
聞き返したカイトの言葉は届かず、突如巻き起こった煙と共に消えたジライヤ。
「まぁ、あとで開けてみればわかるか」
そういって極・秘伝書をしまい込んだカイトは、再び式の喧騒の中に戻った。
――しかしながら、この後のてんやわんやでカイトは極・秘伝書の存在をしばらく忘れ、開けるのはだいぶ後となってしまった。
それが、
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