匿名リフレイン
黛惣介
■
とくにこだわりはない。使っているのは当時大学生だった兄が使っていたデジタルカメラ、自分が中学二年生の時にいらなくなったからと譲り受け、今も現役。約六年選手。自分も当時の兄と同じ大学生になった。
電車に揺られながら、今朝買ったばかりの小説に没頭する。今日は行き先を決めない気まま旅。何も考えずに買った切符を栞代わりにして、降りたこともない駅を目指す。
私がカメラ片手に色んな場所を訪れるようになったのは、中学生のビッグイベントである修学旅行以降――今では飛行機をも使って色んな場所を巡っている。正直、金欠だ。
駅名は知っているが降りたことはない。ホームに降り立ってすぐ、心地良い風が長く伸ばした後ろ髪を
駅を出てすぐに見えた案内板。描かれていた地図は手書き風で、少々見にくい。駅から見える商店街はやや寂れた雰囲気があるが、人通りはそれなりにあって淋しさはない。微かに香る、唐揚げだろうか、揚げ物の香りは朝から何も食べていない私を誘惑してくる。
「観光地……でもなさそう」
しばらく駅周辺を歩き回り、とくに収穫がないのを確認、次に向かう。
カメラ、否、唐揚げ片手に沿道を歩いて行くと、案内板で唯一興味を引かれた自然公園に到着した。駐車場は満車とまではいかないが八割方埋まっている。子供連れの夫婦、カップル、お年寄りの集団――騒がしさは都会に比べればそれほどないが、少々耳にくる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます