文字から始まる恋

大田誠翔

第1話出会い

SNSという文字だけの世界。

相手がどんな人なのか全く分からない世界。

そんな世界の中で出会いは突然訪れた。

普通の挨拶、何気ない会話ただの遊び感覚での言葉。

でも、それが始まりだった。


「ここでは何なので個室にどうぞ」

彼の言葉から個人的に会話をするようになった。

やり取りをするうちに私はどんどん彼に惹かれていった。

顔は?声は?

想像だけが膨らんでいく。

SNSという架空の世界の中で楽しい時間が流れる。


「今日のご飯はなんですか?」

私は予定していたメニューを伝える。

「では、今から行きます」

「じゃあ、急いで準備しなくちゃ」

私はとっさに答えた。もちろんSNSという架空の世界の中で…

「ピンポーン」

チャイムの音が鳴る文字が届く。

彼が私の部屋に遊びに来たという設定だ。

戸惑いながらも楽しく会話は続いていく。

「今日泊まっていいかな?」

予想もしていなかった言葉に驚きながらも私は彼を受け入れた。

~まあ、この世界だしね~とつぶやきながら


文字だけの会話や行動なのに楽しくて、じゃれ合いながら話は弾み

「恋人成立ですね」

その日のうちに私達は付き合う事を決めた。


しばらくの間文字だけでの付き合いは続いた。当たり前のように。


「おはよう」「ただいま」「おやすみ」を繰り返していた。

抱きしめられたり、キスをしたり、普通の恋人たちのように時間を過ごす。

違うのは現実ではないという事。文字だけで表現をしているという事。

もちろん相手は存在している。

ただ、お互いの事は何も知らない。

相手が男性なのか女性なのか、何歳なのか、顔も声も何も分からないまま。

だけど私はどんどん彼に惹かれていった。


突然彼から「通話しよう」

私はドキドキした。逃げ腰にもなった。

本当の私を知ったら今のこの楽しい時間を失ってしまうかもしれない。

ふとそんな事を考えていた。

「まだいいよ」「恥ずかしい」

そう言いながら彼の様子を窺う。

「いいじゃん」「通話しよ」

結局今回も私は彼の言葉を受け入れた。

すぐに電話がなった。

「こんにちは」

男性の声だった。

ずっと聞きたかった彼の声。

それまでの緊張も、恥ずかしさも忘れとても心地よく幸せな時間を過ごした。


この日から通勤時間を利用しながら彼と電話で話すようになった。

気が付けば、彼のメールや電話を待っている私がそこにいた。

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