第145話 よく分からない女
「なんか用っスか?」
目の前で立ち止まり、明らかに自分達に用があると思ったガランが謎の男女2人組に話しかけた。
すると、男は何も話す気はないのか後ろに下がり、前に立った女がアリアスとガランと交互に視線を向ける。
「勇者アリアスはどちらですか?」
完全に質問を無視した返答だったが、特に気にせずアリアスが手を上げる。
「アリアスは僕ですが、僕に何か用ですか?」
女は正直に名乗り出たアリアスをじっと見つめる。
「えーと、なんですか?」
「いえ、失礼しました。ところでフィーリーアという名に心当たりはありませんか?」
何の説明もない唐突な質問だったが、特にアリアスは特に気にすることなく、フィーリーアという名について考えてみた。
だが、アリアスの知り合いにフィーリーアという名の女性?はいない。
一応他の3人にも視線を送って確認するが、3人とも首を横に振った。
「知らないですね」
「……そうですか」
女は残念そうにするが、アリアスにはなぜ女がアリアスを訪ねてきたのか分からなかった。
もちろん質問の意味自体は分かる。
だが、女が何を以ってアリアスがそのフィーリーアという名の人物は知っていると思ったのかが分からなかったのである。
アリアスがそんな事を考えていると女は続けざまに質問した。
「では勇者クドウと勇者アールの滞在先を教えてもらえませんか? いくつか聞いてみたい事がありますので」
「いや、それはちょっと……」
流石のアリアスも女のこの質問には言葉が詰まった。
もちろんクドウ達の滞在している宿は知っているが許可を得てもいないのに勝手に話すわけにはいかない。
それ以前に言葉遣いこそ丁寧だが、遠慮を知らなさそうな上に空気を読めなさそうなこの女をクドウ達の事を教えたくない。
何か問題が起きれば責任を負わなければならないのはクドウ達の事を話したアリアスとなるのだから。
アリアスも他の冒険者ならばまだしもクドウ達とそんなことで遺恨など残したくはないのだ。
(ていうか今この場にアールさんがいたら喧嘩になってるよね? 多分……)
アリアス自身はあまり気にしないが、仮にクドウ相手に今のような接し方をすれば、恐らくだがアールは黙っていないと思う。
アールは自身が侮られる事も良しとしないがクドウの事になればそれはもっと顕著となる。
アールはクドウを侮る者を決して許しはしない。
短い付き合いだがアリアスはその事をはっきりと理解できる程度には『魔王』というパーティーを理解していた。
(できれば会わせたくはないけど、このままほっといたらもうすぐクドウさん達ここに来るよね? 待っていればここに来るくらいの事は話していいんだろうか?)
アリアスが葛藤する中、女は次の言葉を待っているのかアリアスを見つめている。
(なんか雰囲気あるんだよな。態度もそうだけど低ランク冒険者には見えない。でも魔力がほとんどないから魔法はほとんど使えないはずなんだけど)
強そうには見えないのに強そうにしか見えない。
アリアスがそんな女への対応を決めかねているとこれまで一言も発していなかったシステアが声を上げたのだった。
「ていうかお前達は何者じゃ? クドウさんに何を聞きたいのじゃ?」
そう言ったシステアの表情はアリアス以上の警戒の色を秘めていた。
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