第144話 謎の2人組
レナザード達が宿を出て、冒険者協会へと向かっていた頃——
賑わい合う冒険者協会の待合所でシステア達『光の剣』の面々はだべっていた。
今朝、クドウ達と連絡を取り合ってエルナシティアへと約束通り向かう事になったのである。
クドウ達との待ち合わせ時間よりもかなり早く到着してかなり暇だったのかガランが特に誰に言うでもなく割と大きな声で呟いた。
「愛しのクドウさんはまだっスかねー?」
「や、やめんか。馬鹿たれ! 誰かに聞かれたらどうするんじゃ!」
「えっ、今更じゃないっスか?」
ガランの不用意な発言にシステアが焦りながら小声で注意するが、ガランは素知らぬ顔でそう反論した。
ちなみにだが、システアは今日も昨日に引き続きいつもの黒ローブスタイルを脱ぎ捨てた美少女スタイルでキメている。
「まぁ確かに結構噂になっているみたいですね」
ガランに同意するようにニアまでそんな事を言い始めてシステアは顔を真っ赤にさせて黙り込む。
システアとしても冒険者内でちょっとした噂になっていることは知っていた。
原因は分かっている。
昨日、冒険者協会で起きたクドウとシステアのデート事件によるものだ。
クドウはパーティー同士の食事会、システアは一対一の食事会だと勘違いしていたためちょっとした騒ぎとなった事でその場にいた冒険者にそれとなくシステアがクドウに好意を抱いていることが露見してしまったのだ。
そしてあの場にいた冒険者が仲の良い冒険者に噂話として広め、現在のような状態となってしまったのである。
(あぁぁぁぁぁー! もう消えてなくなってしまいたい……)
唯一の救いがあるとするのならそれが恐らくクドウとクドウとツーカーなアールにはバレていない事だろうか。
そんなシステアの心情を悟ったアリアスが慰めるように言った。
「大丈夫ではないですか? クドウさんこういうことにはかなり鈍そうですから。……まぁそれが大丈夫と言って良いのかは分かりませんが」
システア的には確かにバレるのも恥ずかしいので嫌だが、鈍いというのもどうなのだろうか?
そもそも今回冒険者達に噂話が回ったのはクドウが鈍すぎたことが大きな原因の一つなのだから。
「長い戦いになりそうな予感がするっスね」
ガランは他人事のように笑った。
システア達がそんな恋バナに花を咲かせている中、システアは冒険者協会の中に入ってきた1組の男女に目がいった。
特に理由があったわけではない。
強いて理由を上げるなら、男女2人共が頭を覆い隠すような黒いローブを身に纏っていたことがなんとなく気になったくらいのことだ。
「……アリアス」
「なんですか? システアさん」
「今、入ってきた男女少し気にならないか?」
システアに言われてアリアスは協会内の入り口に視線を向けた。
「あの黒ローブの2人ですか? なんかシステアさんみたいですね。身長は全然違いますけど」
「……余計な事は言わんでいい。なにか感じないか?」
再度問われ、アリアスは不自然にならない範囲で黒ローブの男女の様子を伺うが、アリアスがその答えを言う前に、ガランが口を開いた。
「女の方はめっちゃ美人っスね。メイヤさんといい勝負っス。男の方はなんていうか……やつれてるっスね。ベースは悪くないと思うんスっけど」
「おいっ、ガラン。誰が容姿の評価をしろと言った?」
と口では文句を言いつつもガランの言う事も間違いでないとシステアは思った。
男の方は置いとくとしても女の容姿は黒ローブから覗かせる顔だけ見ても女であるシステアにして美女としか表現のしようがない程に整っていた。
「僕、システアさん程魔力の感度良くないんですけど、あの二人冒険者にしては魔力が低すぎませんか?」
ガランの批評の最中に男女の魔力を探っていたアリアスがそう答えるとシステアはすぐさま聞き返す。
「じゃな。というよりはほぼないと言っていいくらいじゃ。それならそれで下位の冒険者として話が通らなくもないが——」
システアが話していると、例の男女は受付にいたエリーゼと何かを話した後、システア達の方を振り向き、男女の方を見ていたシステア達と目が合った。
「こっちに来るっスね」
ガランがそう呟いた十数秒後、謎の男女2人は待合所の席に座るシステア達の前までやってきた。
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