第131話 どうした? システア
アクアとシルフィルにストーキングされていたことなど知らないクドウ達の話は2人が帰還した後も続いていた。
「そういえばアリアスさん達はこれからどうするんですか?」
俺が尋ねるとアリアスは『光の剣』の面々を見回してからそれに答えた。
「えーと、本当は魔人達の侵攻に備えてシラルークに待機してなきゃいけないのでしょうけど、まだ来ないみたいなので一回王都に帰ろうかと。エルナス王にも色々と報告したいですし」
アリアスが言う所の王都とはシラルークから見て魔界と真逆の位置にするエルナス王国の事だろう。
1000年程前に俺の先代の魔王を倒したという始まりの勇者が建国した国で人間界において最大勢力を誇る大国である。
「なるほど、俺達はどうしようかな~?」
とアリアスみたく俺もアルジールとアルメイヤをチラッと見るが、2人はガランと盛り上がっている様子でこちらをチラリとも見ていなかった。
むしろ隣にいるシステアの方が興味深そうにこちらをまじまじと見ているくらいである。
「それでしたらクドウさん達も一度エルナシティアに来てみませんか? エルナス王もお会いになりたがっていましたし、王都をご案内しますよ」
アリアスの提案は結構魅力的だった。
俺がまだ魔王だった頃、外貨集めの為に人間界をお忍びで何回か訪れたことはあったのだが、エルナシティアに行ったことはなかったのだ。
ガランとの話でまったく俺の話を聞いていない我がパーティーメンバー達だが、後になって俺の決定に文句を言う事もないだろうと俺は気軽にアリアスに返事する。
「ではお言葉に甘えます」
「だそうですよ、システアさん」
「……えっ、私は何も言ってないが」
なぜかアリアスに話を振られたシステアはよく分からないが少し動揺しているようだった。
だが、俺がエルナシティアに行くこと自体は反対ではないのか俺に笑顔を向ける。
そういえばシステアといえばだが、美少女モードになってからかなり口数が減った気がする。
パーティー内では参謀的ポジションにいるっぽいので仕事中は結構口数が多い方だが、プライベートでは口下手さんなのだろうか?
そんな事を思った俺は話ついでに気になっていた事を聞いてみた。
「そういえばシステアさんって転移門は誰から教えてもらったんですか?」
話で聞いた限りでは人間界で俺を除けば転移魔法を習得しているのはシステアただ一人である。
転移系の魔法は攻撃魔法とは違って習得には適正はもちろんの事だが、ちょっとしたコツが必要で見様見真似でできるようになるほど簡単なものではない。
するとシステア少し言いにくそうな表情を見せたが、少し間をおいて俺の質問に答えた。
「母から教わりました」
「へぇ、凄い魔法使いなんですね。お母さん」
「えぇ、本当に偉大な魔法使いでした」
——でした? なぜに過去形?
俺はその理由について考えてみると、1つの可能性にすぐに行きついた。
(あれ? 俺、地雷踏んだ?)
システアは俺の表情から俺の思ったことが分かったのか小さく笑顔を見せる。
「ずーっと昔の話ですから気にしないでください」
(いや、こんな幼い女の子にずーっと昔って言われても……ってそういや、システアさん結構な年齢だってプリズンが言ってた気が。……まさか俺より年上って事はないよな?)
システアの年齢を聞きたい衝動に駆られるが、俺はこれ以上の地雷を踏みぬく程愚かではないが……。
と俺が我慢したというのに。
「それで私の母は——」
ってまだ続けるんですか? システアさん?
いやまぁシステアさんから聞かせてくれるんだったら聞かせてもらいますけどと俺が聞く態勢を整えた所でアリアスが突如立ち上がった。
「システアさん! ここではちょっと」
システアの発言を制止する為に発したアリアスの声に俺とシステアだけではなく他の4名もアリアスの方へと振り返った。
そんな俺達の事にも構いもせずアリアスはキョロキョロと辺りを見回し、周囲に人がいないのを確認して溜息を吐いた。
「……システアさん、場所を考えてください」
「あぁ、すまなかったな。クドウさんすいませんが、この話はまた今度にさせていただけませんか?」
「えーと、別に俺はいつでもかまいませんよ?」
というか、システアが一方的に言おうとしただけで俺は知りたいなんて一言も言ってない。
まぁここまで言われると流石に気にはなるが。
「あー、そろそろお開きにするっスかね? 結構いい時間っスし」
「あぁ、そうだな。クドウ様もお疲れでしょうし、そうしましょう」
空気を呼んだガランと素直にそろそろ飽きてきたアルジールのコンビがそう言うと、この日の食事会と言って良いか分からない食事会はお開きとなった。
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