第12話 神ユリウスの記憶① 勇者誕生
遥か昔の話だ。
先代の魔王が魔界に君臨していた時代。
人類の大多数が洞窟や森に魔物や魔人から避けるようにして生活していた。
一応、各地に今の冒険者協会に近いものも存在していたが、今の冒険者協会やユリウス教のような力も規模もなく、村や町にいる比較的屈強な若者を中心に集めた自警団のようなものだった。
何度か国が興った事もあった。
だが、いくら強固な防壁を建てて、都市を作ったとしても、ひとたび魔人が複数で襲来すれば、一夜にして都市が滅ぶなんてことは珍しくはなかったのだ。
人々はいつしか魔人に抵抗することを諦めていた。
そんな時だ。
魔界から遠くに離れた場所に1つの国が興った。
その国の王は言った。
「魔人から逃げているだけではダメだ! 戦おう! 魔王を倒すんだ!」
人々はその王に期待などしてはいなかった。
確かに王は強かった。
だが、これまでの歴史が人類が魔人に勝てない事を証明していたのだ。
それでも王は諦めなかった。
王は旅に出る。
各地にいるであろう王と志同じくする強者を集める旅に。
そして出会った。志同じくする強き仲間たちに。
王は仲間たちと共に各地で魔人達と戦った。
ある時は都市を襲った魔人を返り討ちに。
ある時は王の祖国を襲う作戦を立てていた魔人達の住処に強襲をかけ滅ぼした。
すると、それまでは王たちを馬鹿にしていた人々の目も変わる。
人類でも魔人達に勝てるかもしれない。
そう人々に思わせるほどに王たちの快進撃は凄まじかった。
そして、王を慕うもの達が魔人や魔物に立ち向かうための組織を立ち上げる。
それが、今の冒険者協会である。
徐々に冒険者協会の力は増していき、王とその仲間達がいなくても魔人を倒す者達も現れ始めた。
そしてその時は訪れる。
王がついに魔王を倒す戦いに打って出たのだ。
王は冒険者協会が誇る強者達と共に魔王城を目指す。
その戦いの中で、戦士たちは次々と命を落としていったが、王は諦めなかった。
そして、王とその仲間たちは遂に魔王城に辿り着く。
その頃には王と王が最初に仲間になった者達以外の者達はほとんど残っていなかったが、王はそれでも魔王に戦いを挑んだ。
長い戦いの末、王達は遂に魔王を打ち倒す。
だが、その代償は大きかった。
王が魔王との戦いで命を落としてしまったのだ。
魔王と相打つ形で。
王の数少なくなってしまった仲間たちはそれでもなんとか王の祖国まで帰還し、その事を王の民達に伝えた。
民達は魔王の死に喜びつつも、王の死を悲しんだ。
王の死は王の祖国の次に冒険者協会にも伝わった。
反応は王の祖国と同じで皆が悲しみに暮れる。
そんな中、1人の戦士が言った。
「王は皆を絶望から救った。勝てるわけがないと皆が言った魔王を倒す決意を最初にした勇気ある者だ」と。
いつしか魔王を倒し、命を落とした王は『勇者』と呼ばれるようになった。
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