私の中にあるもの。
福田 有季
第一章;すべての始まり。
第1話
『ピコ~ン』
久しぶりに私のスマホのメール着信の音が鳴る。
この着信音は友達からも家族からもかなり不評。
「なんか気が抜ける音」「もっと良い着信音が無かったの?」散々な言われようだけど私はこの着信音をとても気に入っている。昔のゲームの音で使われているようで古風な感じがする。
そしてメールが立て続けに来ると、昔のテレビである特撮のヒーロー物に出てくる正義の味方の胸の赤いタイマーに似ていて『ピコ~ンピコ~ン』という連続音でさらに楽しい気持ちにさせてくれるのだった。
しかし私の家族からは友人以上に酷い事を言われている。「女の子なんだからもうちょっと可愛い音にすれば良いのに……」
女の子だから。女の子のくせに。私はこういう言葉が大嫌い。女の子だからと言って可愛くなくてはいけないと言うことは無いと思う。
『私は私の思うことをしていきたい』『自分らしく素直に生きていきたい』
私はそのように思うのです。女の子だからと言うことですべての女の子が右向け右をする必要は無いと思っているのです。
親や友達に不評なこの着信音を使い続けている理由も、そんな可愛いものに私を染めようとする周囲の人たちへの反発、そして私のささやかな反論なのかも知れません。
私がこの着信音をとても気に入っている。それだけでいいじゃないですか。それについては他の人からの反対意見は聞きたくないし、言われても聞く耳を持つ気は無い。可愛い着信音が良いと思う人が、そのような可愛い着信音にすれば良いと思うのです。
今日は日曜日、そしてもう時はすでに午後8時。ご飯も食べてお風呂に入ってゆっくりと
学校の連絡がクラスメートから来たのかな?でも学校連絡なら学校方針で家族に見せるようになっているので、先生から自宅パソコンのメールに来るようにしている。友達からのメールとも考えにくい、なぜなら友達ならメールなんてものは使わない。私達はLINEで連絡を取り合っているので、今時メールを使うことは無いのです。
ところが今日になって、その普段使わないメールに着信があったわけで私は余計に気になるのでした。
メール着信1件。そしてこのメールがとても気味が悪い事件の始まりとなるのでした。
「それにしてもメールって誰からだろ?」
発信されたメルアドを見ても、私の全く知らないメルアドだった。
(また業者からのメールかな?)
業者のメールは見る価値の無いものとして、いつものようにメールを消そうとするのですが、このメールはいくら削除をしても消すことが出来ない。
(あれ?このメールってロックがかかってる?)
着信されたばかりのメールにロックがかかっているということは、私には初めての経験だったのでよくわからないけど、削除をいくらやっても消えない。
『削除できません』というメッセージが出てくるだけだった。
(これって何のメールだろ?)
削除ができないという、いかにも怪しすぎるメールを開くことはとても怖かったけど、私はメールを開いて書かれている内容を見てみることにした。
『11014』
5桁の数字が書かれていた。
(なんだこれ?)
全く訳の判らない数字が並んでいるだけ。知らない人からの意味の判らない数字が並んでいるだけの消せないメール。
(なんか気持ちが悪いなあ……)
私はそう思いながらこの消えないメールを削除したくて仕方が無かった。
『削除』私はまた削除を行ってみた。するといくらやっても削除が出来なかったメールだったのに削除が出来るようになっていた。
『削除しました』
今までとは明らかに違ったメッセージが私のスマホ画面に出た。
メール削除を行なって削除しましたと言うメッセージが出てくるのは当たり前のことなのだけど、この当たり前の事が今の私にはとても嬉しく感じていました。
(メールを開いてメッセージを見ると削除することが出来るってそんなメールってある?)
私はこのようなメールは今まで見たことが無かった。実際にこのようなメールがあるはずが無い。あるはずのないことなのに私のスマホには実際にそのありえないメールがスマホに入ってきたのだった。
(新手の業者メールかな?)とも思っては見たが、メールを開いて書かれている内容を見ないと削除できないメールというものが実際に存在しているとしたら、これはこれで大問題なのではないか。しかもこのメールがもしも本当に業者からのメールだとしてもメールの内容が全くもって意味がわからない。
『11014』という数字は一体どういう意味なのだろう?
このような意味の判らない数字を見知らぬ人に送りつけるというのはどういう事なのだろう?
しかしこれだけははっきりと言える。絶対にこれはヤバい危険なメールに違いない!
私は怖くなってそのメールの差出人のメルアドを着信拒否にした。これでもうこの人からの変なメールを送られることが無い。私はそう思っていた。
しばらくするとまた『ピコ~ン』とメール着信音が流れてきた。
見てみると最初に送られてきたメルアドから送信されているのだった。
(あれ?拒否にしたのに何でメールが来るの?)
今来たメールも削除しようとしても削除ができないメールだった。また同じ気味の悪いメールが送られてきたのだった。
メールを開いて内容を確認してみると、また数字が並んでいたのだった。
『10105』
送られてきたメールは最初に送られてきたメールの数字と違っている。
そしてメールを開いてから削除をすると今まで削除出来なかったメールが削除できるようになる。
私はとても怖くなってまた送られてきたメールのメルアドを拒否にした。しかし、いくら拒否にしても次々とメールが送られてくる。
『724106』
・
・
・
『1052167』
拒否にしても次々と送られてくるメール。読まないと削除できないメール。
この数字は一体何なの?どういう意味なの?
私は一体どうすればいいの?わからない……。
『1056194』
私はとても怖くて震えていた。
(一体、何が起きていたの?)
私にはもう意味が判らなかった。ただ数字を送りつけてくるだけの意味不明なメール。誰が何の目的でこのようなメールを私に送りつけてきたのかも判らない。
削除をしても削除が出来ず、内容を見れば削除が出来る。送り先のメールアドレスの拒否をしているのに、拒否をくぐり抜けるように私のスマホの中にメールが次々と入ってくる。私にとって初めての経験だった。
しかし、このメールを最後に謎のメルアドからのメールが止まった。やっと送られて来なくなったため、私は安堵した。
「やっとメールが来なくなって良かった……でも本当に怖かった……」
☆ミ
『城北第二高校二年の
次の日の朝のニュースはとても衝撃的だった。
この町はとても
いつもは数日に一回の割合で見る警察の車も、今日は一日に何台も通り過ぎて行きます。高校にも警察の人が来て亡くなった国房美樹さんの交友関係を聞いてきたり、国房さんの最近の様子なども一人一人に聞いてきました。
「中沢
私は担任の先生に呼ばれて校長室に向かった。
私は校長室の扉を三回ノックし部屋の中から「どうぞ」という言葉を聞こえてきたので、私は校長室に入って行った。「失礼します」校長室に入り扉を閉め、私は辺りを見渡した。
校長室という場所はめったに入ることが無く、私は実は初めて校長室に入る。
窓際の机には教頭先生が居て、とても座り心地の良さそうな椅子に座っている。その机の前にスーツ姿の警察の人と思しき人が2人立っている。警察の人の前には低いテーブルがあり、テーブルの両端に空いている長いソファーが向かい合わせに置かれていた。
「どうぞ、そちらの席にお座りください」
スーツを着た警察の人に言われ、私は長いソファーに座った。
「中沢明理さんですね。いくつか質問をしても良いかな」
私は話しかけてきた警察の人の方を向き、「はい」と答えて
「国房美樹さんのことを知っているかな?」
「隣のクラスの子なんですけど、私は仲が良いという訳ではないので国房さんとは話しをすることは無かったために良くは知りません」
「国房さんと仲の良かった友達って誰か知ってるかな?」
私は首を横に振り「判らないです」と答えた。
「国房さんにトラブルのようなことは噂でも良いので聞いたことが無いかな?」
「トラブルとか虐めとかそういうことは全然聞いた事は無いです」
警察の人たちが顔を合わせ何かうなずいていた。
「そうか、ありがとう」
私は席を立ち校長室から出て行った。
「失礼しました」
校長室から出るとすでに次の人が来ていた。青ざめている顔をしている。
警察の人と話をすることなんてまず無いことだから無理も無い。
人生で警察の人とお話をする事と言うと、交番に行って道を聞くことぐらいで、後は交番に落し物を届けることだろう。それが殺人事件で警察の人に呼ばれるのだから何を聞かれるのかと心配になるのは普通のことだと思う。
私が教室に戻るとクラスの人たちが集まってきて「何を聞かれたの?」「どういうことを話したの?」と質問攻めに遭う。
「国房さんを知ってる?って聞かれたからお隣のクラスの人ということは知ってるけど、それ以外のことは知らないって言っただけだよ」私がそう答えると、隣の席の子が気になることを話し始めていた。
「お隣のクラスの友達から聞いた話だけど、国房さんってスマホを見て怖がってたって言ってた。なんでも毎日のようにメールが来ていてメールが来る度に青ざめてたらしいよ」
メールと言ったら昨日、私にも変なメールが来ていた。訳の判らない数字が並んでいる消しても消えないメールだ。
「どんなメールが来てたの?」私は話に入って聞いてみた。
「消しても消えないメールだって。そんな事ある訳が無いのにね」
消しても消えないメール、私のスマホにも送られてきたメールと同じものに違いないと思った。
「他には何か言ってなかった?たとえばメアドを拒否設定をしても拒否ができないとか」
「なにそれ?そんなことある訳が無いじゃん」友達は笑って答えた。
そんなことはある訳が無い。そんなことは私も判っている。でも……。
私は昨日の起きた出来事を思い出していた。
(なんか数字が書かれていた。なんて書いてあったっけ?思い出せない……)
気持ちが悪いメールだったからすぐにでも私の記憶から消したいと思っていたため、なんていう数字だったのか内容を覚えていない。しかもメールの内容を開いたらすぐに削除してしまったので、送られて来たメールもスマホの中には一通も残っていない。
(事件の情報のために取っておくべきだったのかな?)
でもあんな気持ち悪いものを私のスマホに残しておく気は全く無かった。
そしてそれ以後その気味の悪いメールが来なかったので、私もそのメールのことをいつしか忘れ去ってしまっていた。
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