日常青春事情
抜刀斎
第1話 入学して1日目
暖かい風——
桜の舞う季節——
アニメやラノベでたくさん見てきた夢と希望の溢れる青春の晴れ舞台————
---
今日は高校への初めての登校日であり、また全ての始まりであろう日、入学式だ。
僕はどれだけこの日を待っていたであろうか——。
なぜ待っていたのかって? それは決まっている。青春の塊であるからだ。
趣味を見つけたり、将来の夢を決めたり、友達を作ったり、恋したり、恋愛したり彼女作ったりリア充になったり! …下心ありありなのはもう気づいているであろう。そうである恋愛がしたいです。。
少なからず、小中何事もなく無事に過ごして来た健全な男子ならば誰だって思ってしまうでしょう。
僕は今までたくさんみてきました。アニメや漫画、ラノベにおいてどれほどの人物が高校で美少女と出逢って恋に落ちていったであろうか…。
「いくら僕だって、高校にさえ入れば……。」
——このような想いを胸に秘め、ついに校門をくぐったのだ。
---
「…」
「——以上で、話は終わりです。」
校長先生ぽい人の話も終わったらしく、今から教室に移動らしい。
あれっ?よくアニメとかだともう女の子と出会ったり、フラグが立つ感じなのにまだその匂いすらない…。 まぁこれからなのかなー。
とりあえずクラス発表があるらしいからそれを見に行くことにした。
「……3組か」
教室に入り、担任の先生がくるまでの待ち時間をぼーっと座って過ごそうとしていたら、前の席の人が話しかけてきた。
「おはよーぅ!よろしくな!」と、それだけ。
あれ、初対面でこの距離感か。とちょっと焦ったが、こちらもちゃんと返事をした。
「あ、うん」 と、それだけ。
あっれ?これだけとか、冷たすぎないか?僕どうした?と自分で自分を責めたくなるくらいの返事しかできなかった。
だがこの人は気にしなかったようで、
「あ、俺 大江祐祥!先に名前言わないとな!ごめんごめん」と返してきた。
「あ、こっちこそごめん、俺は神代。よろしく!」
よし。今度はちゃんと返せた。と心の中でキメ顔作ってた自分ちょっと痛いかな?
それからどこ中出身なのかーなど他愛もない話をしていると、先生がきて、自己紹介タイムが始まった。
「えーまず先生から。今日からこの1年3組を担任することになった伊藤だ、よろしく。」
あ、ゴリラ顔…と思ったのは黙っておこうと思った。
それから出席番号順に自己紹介が始まって行き、前の席の人の番だ。何て言うんだろ…。
「えっとー、大江祐祥ですっ!趣味はバスケとか、運動することです!気軽に話しかけてくれてオッケーだよー」
うん。これじゃチャラいイメージつくよな。
そうこうしているとついに僕のターンになった。
(これが第一印象をつける最初のチャンスなんだ落ち着いて穏やかに…)
「えっ、とよろしくおねがいします…神代藍斗と申し上げます。特技は、えーっと、えっと… ……」
——僕の特技はなんだろうか。考えていなかった。
周りが悲しそうな、憐れんだ目でこちらをみてくる。
なんか僕が得意なことはないかと真剣に考えていると、あるじゃないかと気づいたものがあった。
それは……
「僕の特技は、ゲームです。」
——男子ならだれでも言いそうな事を言ってしまった。まずなんで特技なんて言おうとしたんだ僕は…と若干の後悔を感じていた。
あ、ほれやっぱりみんなつまんなさそうな顔してますよ…。
ごめんなさい。別に大会にでるくらい上手いわけじゃないんです……。好きなだけなんです……。とっさに思いついたことを言っちゃっただけなんです……。
「はい、じゃあ次」
僕はしょぼんとしながら着席すると大江君が話しかけてきた。
「下の名前 "あいと"って言うんだ!どんな字書くん??」
「あー、そっか さっき苗字しか言わなかったっけ。藍色の藍に、一斗缶の斗で藍斗だよ。」
「一斗缶の斗ねー」
大江君はクスクスしながらそう言った。
「え、なんかおかしいこと言った?」
僕もつられてクスッとしながらそう聞いた。
「いやーいつもそうやって説明してるのかなって思ってっ」
「えーでも、北斗七星の斗とか言ってもちょっと長ったらしいじゃんねー?」
「そうかそうかー」
軽く流すように彼は言った。
「そんなこと言うなら"ゆうしょう"ってどうやって書くんだよー」
「え、カタカナのネ書いて、右左の右で祐、またカタカナのネ書いて羊で祥!」
「長いじゃんめんどくさそう!」
「はいはい!そこの2人もう少し静かにしような」
だんだん声が大きくなってきてしまって、ついに怒注意されてしまった。
「まぁこれからよろしく頼もうぞ藍斗君や」
こうして、大江祐祥と友達になったのである。
——自己紹介も終わり、先生が幾らかの連絡を言い終えた後、下校となった。
「藍斗ゲーム得意なんだろ?今からゲーセン行かね?」
なんとまぁ入学した初日にデートのお誘いが来るとは思わなかったな。
「お、いいね行こうよ」
学校から歩いて10分くらいのところにある、そこそこ大きいショッピングモールにあるゲームセンターに足を運んだ。
「俺もゲーム得意なんだぜ?」
「へぇ、何が一番得意なの?」
「んー、格ゲーかな!」
「そーなのか。じゃあまずあれやろう」
僕もこのゲームは得意だと思っているのでちょっとウキウキしていた。
「じゃあ、始めようぜ。」
そうして戦いが始まった——が、
特技がゲームとか言っていた自分が更に恥ずかしく思えた。
手も足もでないとはこのことである。
「いや、大江君ってもしかしてプロですか?」
そう純粋に聞いたら、「全然一般人だよ」と答えてくれた。
「いやもうプロ目指せるって。攻撃全部避けるってもう次元違いすぎ…」
そう、本当に手も足もでなかったのである。
なんなら開始から10秒ほどで試合終了だ。
「あはは、小さい頃からずっとやってたからなー。けど、プロはもっとすごいだろ!」
なかなか謙遜な態度を取る大江君にちょっと意外性を感じていた。もうすこし自慢してくるような人に見えるのに。
兎にも角にも、僕は “負けた” という事実よりも、一度も攻撃を当てることができなかったということが悔しく、
「もう一戦やろう!」と再戦を申し込んだ。
—— そのもう一戦 は何回も続き、きりがついた頃にはもう夕方であった。
「いやー、楽しかったなー!」
「…サンドバッグにしかなれなくてごめんよ。」
結局僕は一度も勝てなかった。なんだろう、この人は一体何者なんだろう。
上には上がいるんだな、ということを実体験を経て教えられたような気持ちだね。
それより1日でゲーセンに5千円もつぎ込む日がこようとは……。
どうしたらそんなに強くなれたのかなど聞きながら歩いていると、駅に着いた。
「まぁ、またやろうな!」
「そうだね! 今日はありがとう! 楽しかったよ」
そうして今日は解散となった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます