俺のスキルは【中二病（ｗ）】 なぜかスキルに草が生えてるんですが？

第62話 入学

　ルシル校長は、まるで羽毛のように、ふわりと私たちの横に降りたった。

「弁明したいなら、聞きましょう」

　彼女は手にした黒いワンドを、まっ直ぐお爺さんに向け突きだした。

　お爺さんの膝がガクガク震えている。

「あ、あれは、その、あの……」

　しどろもどろになったお爺さんに冷たい目を向け、ルシル校長が言葉を続ける。

「あなた、フォレスター魔術学院の理念を言ってごらんなさい」

　小さな少女が老人を見あげ、問いつめる。

「ははっ、『種族性別年齢の差別なく、弱き者のため魔術を極めん』です」

「学院長代理、身の程を弁えることですよ」

　えっ、このお爺さん、この学院の偉い人だったの？

　それなのに、ルシル校長の方が偉いの？

「ポタリィ先生、この二人の案内を頼みます。

　高等部のＳクラスへ編入しますから」

　あー、このおばさん、ポチャリィ先生によく似てるとは思ったけど、名前も似てるな。

「はい。では、二人とも、私に遅れないように」

　彼女は木立を縫う小径を、さっさと進んでいく。

　森を抜けると、壮大な校舎が目の前だった。

　湖岸に立つ校舎は、向こう端が霞んでいる。

　屋根の上にある彫像は、近くで見ると馬鹿でかい。

　あんな大きなものがたくさん載ってて、この建物は大丈夫なのかな。

　◇

　教室までの廊下は、自分が通っていた日本の高校にくらべ、三倍くらい広かった。こんな広い廊下が必要なんだろうか？

　右手に並ぶ窓からは、碧い水をたたえた湖と、その向こうに広がる街、そして丘にたつお城が見えている。

　廊下左手の壁には等間隔に重厚な木の扉があり、ポタリー先生は、その内の一つをノックすると、中からの返事も待たず、その扉を手前に開いた。

　扉の向こうに広がっていた部屋は、学校の教室より遥かに大きく、そしてそこにいる生徒らしき少年少女の数は、とても少なかった。

　十人くらいしかいないだろう。

　教室の前には一段高くなった半円形の教壇があり、楽譜台のようなものが一つ置かれていた。

　少年少女は、一人一つの机に座っており、その机は教壇を半円形に取りかこんでいた。

　すごく贅沢な空間の使い方だよね、天井も高いし。

　ミリネと俺は、ポタリー先生に背中を押される形で、教壇の上に登った。

「みなさん、この二人は今日から皆さんと一緒に魔術を学びます。二人は自己紹介をしてください」　

　俺が戸惑っているうちに、ミリネが話しだしてしまった。

「ミストです。魔術にとても興味があります。よろしくお願いします」

　ミスト？　ああ、そうか！　ミリネは偽名を使わなきゃいけないんだった。

　しかし、生徒たちの表情を見ると、明らかに彼女を見下してるよね。　

「グレンです。冒険者をしています」

　なぜだか、生徒たちがざわついた。

　冒険者って驚かれるようなものなのかな？