俺のスキルは【中二病（ｗ）】 なぜかスキルに草が生えてるんですが？

第52話 絶望

　ザカート先生が落とした剣を拾った俺は、紅目の化けものをめった斬りにした。

　それでも、ヤツの動きは停まらない。

　やがて壁際まで追いつめられた。

　大きく広げた赤黒い手がゆっくり狭まり、まるで罠のように俺を呑みこもうとしていた。

　絶望で目を閉じかけた俺は、すぐ近くで大声を聞いた。

「諦めるなっ！」

　横から強く押され、地面に転がる。

「があっ！」

　倒れたまま見上げると、化けものがザラート先生に抱きついている。

「ぐがっ！」

　先生の口から叫び声が上がる。

　彼はゆっくり俺の上に倒れてきた。

「せ、先生！？」

　暗くてその顔色は見えないが、息が荒く早い息の先生は、その体から力が抜けていた。

「ぶ、無事だったか……」

　先生から弱々しい声が聞こえた。

　上半身を起こし、化けものの方を見ると、ヤツは棒のようなものを振りかぶったところだ。

　先生の服を掴み、思いきり壁を蹴る。

　バンッ

　化けものが叩きつけた棒は、さっきまで俺たちがいた床とぶつかり、その先端が潰れた。

「助けろっ！」

　数人の生徒が、床に倒れた先生と俺に近づこうとした。

　しかし、化けものが棒を振りまわし、生徒たちを追いはらう。

　そうしておいて、ヤツはゆっくりこちらへ近づいてきた。

　　◇　－　ミリネ　－

　第一階層に残された惨状を見て、私は足が震えた。

　いったいここでなにが起こったというの？

　ルシル校長は、あの死体の中に学校の生徒はいないと言っていたが……。

「第三層のボス部屋だ。さっさと終わらすぞ」

　校長の声は落ちついている。

　第一層、第二層のボスは、それぞれ彼女が唱える火の初級魔術、水の初級魔術一撃で消えさった。

　冒険者たちは、呆れた顔でそれを見ているだけだった。

「ストーンバレット！」

　土の初級魔術は、一抱えほどもある岩石となり、大型のゴブリンらしき第三層のボスが現われたと同時に粉砕した。

「急げ！」

　校長の声で走りだした冒険者たちに遅れないよう、床に開いた穴から下層へ続く階段を駆けおりる。

　モンスターが残したのか、階段には筋状に二本、血の跡が残っていた。

　黒髪黒目の少年の姿が心に浮かぶ。

　グレン、どうか無事でいて！