9 流星お姉さん

 この町に来て楽しみもあります。

 それは電波に乗って、毎日ラジオから聞こえてくる、これ。


『それでは、今日の流星予報です。流星お姉さーん?』


 キャスターの呼びかけに、世界を照らすような、明るい声が流れた。


『はーい! 今日もキラキラ元気、カドパンこと流星お姉さんのカドミでーす!』


 ラジオから流れるニュースの予報コーナー。

 その可愛い声が人気で、番組の看板アナウンサーです。

 流星お姉さんの声を聞いて、1日頑張ろうとやる気が出ます。


『それでは流星予報にまいりましょう! 朝、隕石メテオが降りましたが、夕方も局所的に隕石が降る街があります。予報ではゾディアック・ストリートの西、うお座街に降る予定です』


 流星お姉さんことカドミ・アナウンサー。

 カドパンの愛称で呼ばれる人気アナは、美人と評判で、まだ独身。

 いつかカドパンに会いたいなぁ……。


『うお座街にお住まいの方は、お家の中から出ず、扉や窓は板を打ち付けて、流星打ちの業者さんに、打ち返しの依頼をお願いすることをおすすめします。街の中心地、子グマ座街やオリオン座街は比較的安全。キレイな星空となるでしょう!』


 お姉さんの声に癒やされる僕とは違い、流星打ちのアルミは眉を吊り上げ、考え深い顔付きで呟く。


「今の予報で依頼が来るわね」


 と、早速、壁に取り付けられた電話の呼び鈴が鳴って、アルミがポニーテールをなびかせなら飛びつく。

 彼女はコップの受話器を取り、マイクに向かって返事を繰り返す。

 メモを取り話が終わると「ご依頼、受けたまわりました」と、返して電話を切った。

 メモをちぎってこっちに来た。


「うお座4番街から街を守る依頼が来たわ。さぁ、稼ぎに行くわよ!」


 とはいえ、僕には気になることがある。


「うお座4番街だよね? 町のハジっこで遠いから、ラジオの予報どおりだと、町へ着く前に隕石が落ちたゃうよ?」


「あぁ、あんたにはまだ教えてなかったわね。とりあえず、ハンマー持って出るわよ!」


 言われたとおりにお店の外へ出ると、ドアにかけた札をひっくり返して「OPEN」から「CLOSE」に。

 アルミは腰のポーチから、何やら取り出すとこっちへ手を付き出す。

 

 渡されたのは、拳と同じ多きさの赤い石。

 赤い石はガラスのように透明で、中に黄色い稲妻の結晶が閉じ込められている。

 これは隕石を加工したガラ玉だ。

 

 彼女は新たに取り出したガラ玉を地面に落とすと、僕へ真似するように指で指示。

 僕が同じようにガラ玉を落とすと、アルミはハンマーの頭を下に向けたので、見様見真似で僕もハンマーを同じように下へ向ける。

 アルミのタイミングに合わせて、握ったハンマーを下へ落として、ガラ玉を鉄球で砕いた。


 ガラ玉は火花を散らして破裂、静電気のようなヒリつきがハンマーに伝わると、火花が鉄球を包んだ。

 次の指示でアルミが急かす。


「早く! なんでもいいから、ハンマーに乗って!」


「ハンマーに乗る? ど、どうやって?」


 アルミはハンマーを手から離すと、ハンマーは倒れて斜めを向いて静止。

 そのハンマーの棒にアルミがジャンプして、両足を器用に乗せるとハンマーは、ロケットのように飛び跳ねた。


「ア、アルミ!?」


 チュチュのようなスカートをなびかせる彼女に、僕は置いていかれると思い、慌ててハンマーに乗る。

 アルミのように立ち上がることができなくて、ハンマーから振り落とされた。


「わぁ!? 難しいよ」


 ハンマーの棒が、首を降るように左右に揺れて震動。

 早くしないとハンマーだけ飛んでっちゃう。

 僕はハンマーの棒に手足を伸ばして、芋虫みたいにしがみつく。


「うわぁぁぁあああ!?」


 ロケットに変わったハンマーは、そのままスタート。 

 波に乗るサーフィンのようにハンマーの棒に立ち上がるアルミとは逆に、木にぶら下がって猿みたいにしがみつく僕。

 そんな格好だから、「アツい! イタい! アツい!!」お尻が地面に擦れて燃えそうに熱かった。

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